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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
ここは獣人の国
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その時である。


空に高く大きな飛翔の音が聞こえ、急にあたりが暗くなった。

空一面に広がるのは、鳥族。太陽を隠すほどの大群だ。


「ほら、あれが鳥族です。私なんかよりよっぽど美しいでしょう」


ニーケが眩しそうにうっとりと、鳥族の移動を眺めた。


「羽が大きいほど美しいとされています」


確かに先頭切って羽ばたく鳥族の男は実に美しい。顔だけならどこかのアイドルグループ並みだし、大きな翼も実にかっこいい。だが。


「鳥・・ですね」


「ああ、鳥だな」


ダンテとカロンが、そうポツリとつぶやいた。

鳥族の飛翔は大変美しい。お顔立ちも実に艶やかだ。ただ、なんというか、その、足がフラミンゴ的というか、ダチョウ的というか、完全に足元が、鳥なのだ。


「ねえ、ニーケ。確かにあの人たちは美しいけど、ちょっと鳥が過ぎるというか・・私は貴方の方がお仲間よりもよほど美しいと思うわ」


ミシェルが申し訳なさそうにうっとりと鳥族の飛行を眺めているニーケにそう告げた。


ニーケの翼は小さいが、とても可愛らしい。羽の大きさなんぞ別にミシェルにはどうでもいい。

それにニーケの足は普通のヒトとほぼ同じ、ちょっと普通のヒトと比べると、細くて長くて真っ直ぐだなという位だ。


要するに、ミシェルの目に映るニーケはモデル体型な上に小さな羽まで要している美しいだけの若い娘だ。

ニーケが絶賛する鳥族の連中は、まあ美しいがちょっと鳥要素が強すぎる。

ミシェルの美的価値観では圧倒的にニーケの方が今空を旋回している連中よりも、美しい。


(ん?)


ミシェルがニーケにかけた言葉に呼応するように、ニーケの後ろのさざめきが大きな光となる。

光は四方八方に輝きを増して、ミシェルは眩しくて思わず目を伏せた。


さざめきは、ミシェルに映像を見せた。


ニーケがまるで神話の女神のごとく、背中の空いた神殿の巫女の纏うドレスを着て、聖女様の元でお仕えしている姿である。聖女様が民衆に言葉を投げかけると、その小さな翼をヒラヒラとさせて聖女様の周りを旋回し、そしてバスケットに入れた花弁を聖女様の周りに降り注ぐ。


実に美しい天女のごとく姿だ。


足元には大胆なスリットが入っていて、その鳥族由来の美しい足の形を見せている。靴はない。

小さな翼は遠い空へは飛べないが、聖女様の周りを旋回し、祝福の言葉を授けるたびに、あるときは聖水をまき、あるときは花弁をまき、あるときは横流しに飛翔しながら笛を吹く。


人々は美しい聖女の使いに見惚れている。

そこには自分を醜いと恥じていた子供の姿はどこにもない。

この世に二人といない、不世出の聖女の美しい使いの、堂々たる姿があった。


そして聖女の使いは聖なる言葉を持って生まれていた。


「人と違う事は祝福です。子供たちよ。顔を上げて堂々と生きなさい」


足を持たずに生まれた子供。

肌の色が他と違う子供。

病気で目を無くした子供。

親を持たない子供。


聖女の使いは各地を巡って人とは違う状態に苦しむ子供たちに聖女の言葉を、神殿の精神をその翼を持って伝道している様子だ。

子どもたちは羨望の眼差しで美しいニーケの姿を認め、そしてニーケの言葉に震える。

かつての自分であった子どもたちの姿に、聖女の使いは心の底からの励ましと、涙と、そして愛を伝道している様子だ。


「あ、ミシェルさんまたどうしたんです!」


ダバダバとそのニーケの立派な、高潔な姿を見てしまったミシェルはまたも滂沱の涙にくれる。


「ニーケ、あなたがその美しい姿で生まれたのには訳があったのよ。あなたはなんて、なんて偉い・・」


ビービーと鼻水まで垂らしながら号泣するミシェルに、ダンテはタオルを押し付けて、カロンは氷を魔法で出してくれた。


ポカンとしているニーケに、ようやく涙が収まったミシェルは居住まいを正し、そしてカロンにお願いをした。


「カロン、いますぐに聖女様に繋いでくれる?いい人材いたわよって」






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