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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
ここは獣人の国
103/105

サイコロの数字に導かれたのは、讃美歌のページ。


結婚式のバイト神父をしてる外国人の知り合いが、「こういうの式で流してるとそれっぽいから」と言っていたのを思い出した。近所の音大生を借り出してきて、式は讃美歌を歌わせるらしいので、結構讃美歌はカラオケで需要があるらしいのだ。


(えっと・・神殿で働けって事?)


確かにここは神殿の一部にある宿泊施設だし、この子は宗教に答えを導き出すべきだ、という事なのかもしれない。

よくは知らんが、ここの国もディーテ王国も、同じ神を信仰しているらしくて、信仰のベースにあるものは、寛容の精神らしいのだ。こういうハーフの身の上で苦しんでいる子には、受け入れ先として悪くないのかなとは思う。


「どうでした?」


淡々とニーケはミシェルに声をかける。


「えっと、神殿に関する何か見たいなんだけど・・」


ミシェルは、一応今見えたものを答えた。

嘘ではない。讃美歌が出てきたのだから、正解は正解のはず。


(でも)


「ああ、なるほど、神殿でしたらまあ、私のようなものでも憐れんで受け入れてくださるでしょう。小さな事務の仕事くらいなら父に口をきいてもらえると思います。そこでなら誰にも迷惑かけずに、一人で生きていけると思います。ミシェルさん、ありがとうございます」


ニーケは納得した様子で、礼を口にした。


だがミシェルは、なんかしっくりこないのだ。

この世界で生きていくのに不便利である自分という存在を諦めてうけいれて、静かに生きていこうというそのニーケの姿勢にも、それからこのメッセージそのものにもだ。


ニーケが神殿で働くのはそう難しくはないだろう。

寛容を掲げる神殿であれば、この非常に生きにくい存在として生まれてしまった子供にも、温かい救いの手を差し伸べて、そして居場所を与えてくれるだろう。


それにこの子の父親は割と社会的には高い位にいる様子だ。

口利きがあれば、厄介払いではないけれど、神殿の住み込みの仕事もおそらく簡単に紹介してもらえるだろう。


だが。


(違う。この子はこのままで完璧よ。このままで、胸を張って、大威張りで生きていくべきよ!!)


この子は憐れな存在では決してない。


だって、ミシェルは一瞬で空飛ぶ彼女の姿に心奪われたではないか。

あまりに美しくて、いてもたってもいられずに部屋から飛び出して、彼女がいかに美しいのか伝えたかったほど。


違う。

断じて違う。


ミシェルはこの美しい子が、憐れまれて静かに隠れ暮らすだけの存在であるなど、決して認めない。

この子は絶対に、祝福された存在だ。

私が聞きたいのは、どうやったら静かに暮らせるかなんて、つまんない事ではない。

ミシェルはほとんど怒りを覚える。


この子が生まれてきた事を、なぜ世界は祝福しないのだ。

この子の違いを、なぜ世界は喜ばないのだ。

なぜこの子を日陰に隠してしまおうとする。

こんなに、こんなに美しいのに。


(ちょっと!訳わかんないわよ!あんたたちちゃんと仕事しなさいよ!私はこの子に)


ミシェルはすっくと立ち上がった。戸惑うダンテも、カロンもニーケももう目に入らない。


ミシェルはただ一点、ニーケの後ろに小さく申し訳なさそうにさざめく美しい光を睨みつけると、大声で怒鳴りつけた


「ちゃんと教えなさい!私が知りたいのは、この子が光輝く幸せ多い道よ!静かに隠れてしょぼくれて一生暮らす道ではないわ!」

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