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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
ここは獣人の国
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(ここも。あそこも。私の居場所は何処にもない)


ミシェルの頭に直接流れ込んでくる強い感情で、ミシェルは頭痛がした。


(私は一体誰なの。ヒトでもない。鳥族でもない)


次に襲ってきたのは映像。

女の子の母だろう。夫と、そして女の子と男の子の双子がいる様子だ。夫も双子も、ヒトだ。


(あ、この人がお母さんね)


ヒトの家族は幸せそうだった。

そしてこの家族の中で、女の子はあまり居心地は良さそうではなかった。


自分だけ種族が違うので、生態が違う。

夜は目が全く効かないので一人だけ寝る時間が早いし、羽は手入れが必要なために特別な寝室が必要だ。


双子達はまだよく事情がわかっていないので、姉だけエコ贔屓されていると父母に文句を言う。

その度に、「お姉ちゃんは違う生き物だ」という父母に悪意はないのだろうが、その言葉を聞くたびに、胸を抉られるような思いを女の子はしていた。


父とも血がつながっていない。種族すら同じくしない。


家庭は居心地のあまり良くない場所であった様子だ。


その上家族は全員ヒトであるため、女の子の獣人としてのニーズについても理解は少ない上に、ディーテ王国には鳥人の獣人はほとんどいない。鳥人にとって、羽の手入れは欠かせないもので、怠ると病気になる。


その重要性を誰もよくわかってなかった為、女の子はよく、病気になっていた。

羽の手入れ不足だったと知ったのは実はつい最近だ。


人々の奇異の目と、生活の習慣の違いからの住みにくさに、女の子は父に助けを求めたらしい。


女の子の父は、その頃同じ鳥人である番いと出会い、恋に落ちて、結婚して幸せに暮らして、子供にも恵まれていた。こちらは男の子二人の鳥人。


父親はまともな人格だった上に、番いも心の優しい女だったので、すぐに女の子を留学という形で引き取って鳥人として育てる事とした。


だが、女の子は半分はヒトだ。


羽はついているが、奇形の範疇に入るほどに羽は小さくて、うまく飛べない上に、ずっとヒトとして育ってきていたために、飛行訓練が全く進んでいない。


鳥人の間はいかに優雅に空を飛べるかが、美的な部分の最優先事項になるのだが、この女の子は子供の鳥人ほどにも飛べない。


鳥人は空を飛んでいるお互いの姿を見て番いを見つけるらしいというのに「醜い」飛行姿なのだ。


女の子は必死で飛行訓練を行うが、そもそも肉体的な部分で飛行が難しい状態だ。


その上、女の子の顔を見るたびに、本来ならとても優しい気質である、父の番いとなった女が苦しそうに涙を浮かべたりするのだ。愛する人がほかの女と子供を作っていた事実が、女を苦しめるらしい。


己の番いを苦しめている事実で、父も苦しむ。


女の子は、自分の存在が父とその番いを苦しめている事実に、居た堪れない思いだった。


(私の居場所はどこにあるんだろう)


神殿のはずれの噴水のある一角で、日がな一日過ごすのが、この女の子の日課になっていた。




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