嗤うアリス
「ねぇどこへ行くの? 一緒に遊びましょ」
アリスは笑う。
ひどく澄んだ青空の下、大きなキノコが日陰を作る、そんな世界で。
「とっても楽しいのよ? おっきくなったり、小さくなったり」
アリスは笑う。
遠くの赤いお城では、トランプの兵隊がせっせと薔薇を赤く染める、そんな世界で。
「きっとチシャ猫に何か言われたのね! あの子はいつも邪魔ばかり」
アリスは笑う。
半透明な猫が、大きな木の上で怪しげな笑みを浮かべる、そんな世界で。
「ここは自由なの。ほら、こっちにおいで?」
アリスは笑う。
空の小瓶を蹴飛ばし、小さなケーキを踏み潰す、そんな世界で。
「だってここはわたしのモノガタリなんだから」
アリスは笑う。
ポケットから金色の懐中時計がこぼれ落ち、ガシャンと音を立てて砕け散る、そんな世界で。
「繰り返される、わたしの、わたしだけのモノガタリなんだから」
アリスは嗤う。
しだいに空が闇に支配される、そんな世界で。
「戻るトコロなんてないの。全部わたしのモノなんだから」
アリスは嗤う。
その手から、白い手袋と扇子が投げ捨てられる、そんな世界で。
────さぁ、貴方はどんなアリスかしら?