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母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?  作者: 四季


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21話「贈り物は」(2)

 私は流れのままに可憐な紙袋を受け取ってしまう。


 プレゼントを開封するというのは、何となく苦手だ。でもそれは、今に始まったことではない。向こうの世界にいた頃、それこそまだ幼かった頃から、私は貰ったプレゼントをすぐに開封するのが得意でなかったのだ。


 その理由の一つとしては、綺麗に開けるのが苦手ということもある。


 プレゼントには必ずと言って問題ないくらい立派な包みが付属している。包装紙、リボン、種類は様々だが。しかも、それらは大抵、綺麗に開けづらくしてしまっているものだ。そういった強敵たちと対峙しつつ、人前で綺麗に開封すること。私はそれがとても苦手で。そのため、段々プレゼント自体もあまり嬉しくなくなってしまったのだ。


 そして、もう一つの理由。


 それは大喜びすることが苦手だからというもの。


 私は幼い頃から表情を露わにすることがそれほど得意でなかった。人見知りであったことも影響しているようにも思う。その結果、プレゼントを貰った直後に大喜びすることができず、これまで幾度となく残念な目に遭ってきた。


 もちろん、私だって、プレゼントを贈ってもらえたことは嬉しいのだ。相手の人が特別なものを贈ろうと考えてくれたことも嬉しいし、貰えたこと自体も嬉しい。


 でも、それを上手く表現することができない。

 それで『あまり喜ばない子』と誤解されてしまうことを繰り返してきた。


 それによってプレゼントを貰うという行為自体に苦手意識が生まれ、今ではすっかり不器用な人。


「……マコトさん?」

「え」

「あの、何をぼんやりしているんです?」

「あっ……ご、ごめんなさい!」


 つい自分だけの思考に入り込んでしまっていた。

 さりげなく恥ずかしい。


「開けてみて下さいよ。絶対気に入りますってー」

「そ、そうですね……!」


 私は可憐なデザインの紙袋から慎重に中身を取り出す。それは四角い箱だった。でも、箱本体はまだ露わになっていない。箱を包む紙があるのだ。その包装紙も、紙袋と似たような柄で、とても愛らしい雰囲気のデザインだった。


「包装紙が破れたらすみません……」

「あぁ、それは気にしないで下さい。よくあることです」


 なるべく丁寧に、なるべく慎重に。そんなことを考えつつ、私は包装紙を開いていく。そして、それから数十秒。私は包装紙を箱から完全に外すことができた。

 多少破れてしまった部分はあるが、これはまだ比較的綺麗な方だと思う。


「結構上手じゃないですか」

「そうでしょうか……」

「ですよ。だって、ほとんど破れてませんし。僕なんて、まぁ、いっつもビリビリですから」


 それは自慢にはならないぞ!?

 ……でも、ビリビリになってしまうのは分かる気がする。


「中は木箱だったんですね」

「はい。蓋を開けてみて下さいー」


 少女のような可憐さがある包装紙を外し、シンプルな木箱が露わになる。

 蓋をゆっくりと開けていく。


「……これって!」


 蓋が開いた瞬間、私は思わず大きめの声を発した。

 木箱の中のものに見覚えがあったのだ。


「尻が開く虎ですか!?」


 あれはいつだっただろう。もう記憶が曖昧になりつつあるが、いつかこのおもちゃのようなものを見たことがある。確か、トウロウと出掛けた時だったはず。


「そうなんですー。買ってみました」

「トウロウさん、これ、実は気に入っていたんですか!」

「あぁ、まぁ……ちょっと記憶に残っていたので」


 確かにこれなら良い贈り物と言えるだろう。何せ、私とトウロウの思い出の品なのだから。そんなことを思っていると、私は自然と「ありがとう! 嬉しいです!」などと言ってしまっていた。

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