第五話
兄の私室。魔法薬で応急手当をして治癒師に傷の処置をし、あとは失神から回復するだけとなった。流石にこんな目に合わせた私がいないというのも目覚めが悪かろうと起きるまで待機している。
ほどなく兄は目覚めた。
「お兄様、大丈夫ですか?」
「・・・・・ああ。呆気なく負けたのは兄として面目が立たないが、それは以前から分かっていたことだ」
「以前から、ですか?」
「ああ。お前の戦い方が俺とは違うことも、お前にとっては曲がった助言を繰り返していたことも含めてな」
少し意外ではあった。兄はそういったことに疎いかと。もっとあけすけに言えば自分のスタイルを押し付けたりとかするのかと思っていた。もちろん悪い意味ではなく、それが最も強い・安全に繋がるから、と。
「スノウ。お前にはお前の強さがある。俺にはなく、俺以上に強いものだな。その代わり俺よりも傷つくこともあるだろう。俺が教えていたのは『俺のスタイルならばこうする』という前提に基づくものだ。俺と同じスタイルの攻略はこれで容易になるだろう。・・・・『学園』へ行っても達者でな。無事に帰ってこい」
「はい、お兄様」
そうして兄の本心を聞いて、家人との、知人との別れを済ませると、あっという間に『学園』へ出発する日となった。