第五十一話
「『影縫い』」
「! 『闇穿ち!』」
影に魔力を通して動きを縛る魔法。それを即座に腕に魔力を通してシンボルを破壊する。
『影縫い』を放ったのは、ミコト様だった。
「あらあらまぁまぁ!しっかりと習得なさいましたね!さすがはスノウ様ですの」
コツコツと足音を響かせながら近付いてくる。
首筋にチリチリとわく感覚。
これは殺気?
「ミコト様、今のは私を試したのでしょうか?」
「いえいえ、場合によってはきちんと捕らえるためにそれなりに全力でしたよ」
「なぜ、でしょうか?」
「だって、こんなに早く防御魔法を手にしてしまうんですもの」
コツ、コツ、とゆっくりと歩いてくる。
対して私はカタカタと震える手を剣にかけるだけだ。
「もう少し、眠りましょう?」
意識の間を縫うように気付けばミコト様の顔が間近にあった。慌てて後退しつつ剣を振るう。だが情けない剣筋はミコト様に触れることすらない。子どもが棒切れを振り回すのと同じ程度の脅威。
己を省みる、間もない。ミコト様がいない。
「どうしたです?そんなに慌てて」
ゾッとするほど落ち着いた、鈴を転がすような声が背後から聞こえた。
そして、背中には硬くて細いものの感触がある。ミコト様の剣の柄、だろうか。
「はい、ここまでですの」
「・・・・は?」
「倒れた直後とはいえ即座に戦闘態勢に入ったことは加点ですが、やはりまだまだですの。スノウ様にはどんどん強くなっていただきますので、頑張ってくださいですの」
「今、私を殺そうとしたのでは?」
さきほどまであった殺気や焦燥感はもう感じない。代わりに疑問が沸き上がり続ける。
「まさか!少なくとも、今私の意思で誰かを傷つけるつもりはありませんの!」
でもね、と続ける。
「私はあくまで異邦人。場合によってはスノウ様と敵対するかもしれません。それは忘れないでください」




