第四十六話
空間に腰掛けるように浮かぶ老人。
手には宝石の原石と思われる石がついた錫杖のようなもの。
「風の7。風華輪」
ミコト様が剣を振るう。現れるのは風で出来た歯車のような斬撃。確か威力も高くある程度動きを操作出来るはず。
いきなり使うにしては規模の大きな魔法。
様子見をしていた先生方も警戒態勢から臨戦態勢に切り替わる。
リズも空気を読んで光のシンボルを描き始める。
私は・・・・・。
「『風刈』。落ち着け姫よ」
「今回の件、貴方の仕業ですのね?」
「如何にも。この国における戦力を確認したかった故。しかしこの程度ならばある程度の損失で国獲りが出来ると概算した所存」
「それを私が許すとでもお思いですの?」
「そこまで烏滸がましくはありませぬが、我が君がどう判断されるかはわからぬこと」
「ならば、貴方を仕留めて報告させないのが最良のようですね」
「手負いの姫と疲弊した兵。その程度の戦力でそれができるとお思いで?」
「やらねばなりませんの」
「・・・・・・・ふぅむ」
ビリビリと轟くような、それでいて酩酊するような、劇毒を飲んだときのような、形容し難い魔力が渦巻いた。
「やめておきましょう。我が任は次世代戦力の確認のみ。そこに姫を傷つける任務はありませぬ」
ふっ、と魔力の圧が消えた。
「『空繋ぎ』」
空間が歪み、そこに老人は消えてしまった。
暫しの静寂。それを破ったのは私の息を吐く音だった。
息すらできない。許されないほどの圧力。
リズも先生方も同様らしく各々腰が抜けたように座り込んだり膝に手を当てて汗を垂らしていた。
その中で唯一、ミコト様だけが老人が消えた空間を睨んでいた。




