43/53
第四十一話
血しぶき。
ばしゃ、と水をこぼしたような音。
転がる男性の腕。
一拍遅れて、ぐっとくぐもったうめき声。
そして今まで自分を圧倒していた相手の姿。
左腕を無くし、血にまみれ、無くなった腕を呆然と見つめている。
私がコレを成した。
あとは失血が続けば勝手に意識を失ってくれる。
と、思った。
相手の目にはどす黒い色が宿っていた。
それは多分、警戒であり。憎悪であり。殺意であり。敵意だろう。
今改めて、私は敵に認めれた。『人質に値する小娘』から『この場で殺す敵』に。
少なくとも甚くプライドを傷つけたようだ。
腕一本分バランスが崩れ、失血もした相手。ここにきて、私はまた躊躇しようとしている。
もう止めておこう。死んでしまう、と。
それがどれだけ心を傷つける言葉か知っているのに。
だからこそ、私も貫き通す。自分を叱責する。
相手を殺すつもりで、より研ぎ澄ませて。
斬る。
無拍子。
それは右手だけで構えた相手の剣に防がれた。




