第四十話
殺意。相手を殺す意思。
殺せば情報は聞き出せない。
殺せば裁きを与えることは出来ない。
他にも殺さない理由はあった。
では殺せない理由は?
それはひとつ。
私の意思が、思いが、心が、拒絶した。
自らが傷だらけになろうと、治癒を受けられる。
だが誰かを殺してしまえばその罪を背負うことになる。
そんな命の責任から私は逃げ続けていた。
その結果が、今だ。
そのせいで今も誰かに心配をかける。
何よりも自分の挟持が許さない。
なんだこの体たらくは‥‥‥!
今一度、心を研ぎ澄ませ。
剣を構え直せ。
元よりこの実力差。無用な心遣いだったろう。
倒すんじゃない。
殺せ。
風のシンボルスタンプが消失する。
元より使えなかったがスタンプの維持に必要だった魔力が体を巡る。魔力の充溢に伴う僅かな疲労の回復。
思い出すのは領地での盗賊の討伐。お兄様とお父様もいたし、兵もいた為誰も死なせずに圧倒できた。殺そうと思えばあの時できた。それをしなかったのは、選択できなかったのは、私の覚悟が足りないせいだ。
奇しくもあの時相対した盗賊が手にした武器も短剣だった。
思い出せ。あの時の剣技は。お兄様との鍛錬は。ミコト様との剣舞は。
全ての戦いを。
全てが一つになる。
有剣夢想。
剣有りて夢思う動きをす。
強力なイメージは実現する。
足音を殺し、剣風すら殺し、死角からの斬撃。
無拍子。
速さの剣の、基礎にして奥義。
それは敵の防御すらすり抜けて、左腕を切り飛ばした。




