第三十五話
無音で翼竜の体が灰のように崩れていく。
活動も停止し、僅かに残った魔力はその体を維持しようと崩壊を遅らせると共に巨体を空中に留めようとしているが、緩やかに墜ちていく。
その内音もなく墜落し、少しずつ崩壊するだろう。
黒い石を破壊した時点でそれは必定だ。
先生はまだ『天使のベール』を使ってくれてる。
矢の来た方向は確認してある。あとは・・・
着地と同時に風景に溶け込む風の5『纏景』を使う。闇系統の『姿隠し』ほどではないにしても発見を遅らせかつ移動スピードも上がる。
シンボルスタンプは切れないが、風属性だって似たことは出来る。
水の矢は飛んでこない。逃げたのか様子見か。
風の3『風読み』。視覚を閉じることを条件に風が届く範囲で周囲の状況を知覚出来る。
すると、いた。やや右前方。多分闇の『姿隠し』を使ってる。これは『隠れ蓑』か?余りにも隠す範囲が狭い。より難度が高く、隠密性に長けた術。
逃さない。
風の8。今使える最大範囲、最大威力の風魔法『大嵐』。範囲を指定し、その中心から旋風を発生させる。それは徐々に大きくなり、やがて範囲内に荒れ狂う。大嵐の中は無数の風の刃と飛来物で逃げ場は一切無い。
言うなれば風の檻。風の壁も突破することは容易ではない。
そこに飛び込む。
気づいた頃にはもう遅い。周りの木々すら飲み込み砕き、飛来物に変える。それは凶悪な魔法。
そこからはギュッと範囲を絞っていく。よりダメージを効率的に与えられるように。
逃げられなくすれば、刃が届く!
白い剣が隠れ蓑を切り裂く。




