第三十二話
敵は帯剣していない。
術師タイプ?姿を見せたのは自信の現れか、仲間への信頼か。
確かにシンボルスタンプがあれば魔法の発動速度・威力・精度も上がるし、姿の見えない援護要員がいるならこちらも慎重に責めざるを得ない。
更に問題は、彼らが何人いて、何を目的としているのかわからない事。
不明は手を鈍らせる。
またあと一歩のところまで追い詰めても三人目が妨害するかもしれない。
今のところ、相手が見せたのは闇、火、雷。それに援護要員(Aとしておく)が水だけ。
『影くらまし』くらいは使えるだろう。
対して、こちら側は先生がお二人。内片方は光のシンボルスタンプを使って闇に対抗できる構え。それに比べて私はその場しのぎにそれほど得意でもない風のシンボルスタンプを使ってしまい、使えるのは風魔法のみ。火や雷を防ぎやすい地属性も使えなくなった。
こういう時に先生方との実戦経験の差を感じるのだ。
「そろそろいくぞ『青天の霹靂』」
「身体強化・ダブルアクセル!創造魔法『烈風斬』!」
相手の『青天の霹靂』は魔力を雲のように集め、そこから周囲へ火と雷を降らせる範囲魔法。『烈風斬』は風のシンボルを装填し、刃を振るうごとにシンボル1つを風の刃に変換する魔法。注入する魔力量は多いし、魔力の雲を散らせれば『青天の霹靂』そのものを止められるかもしれない。
その目論見は成功した。
そもあの展開速度の範囲魔法であの威力がおかしいのだ。魔力の核は分かりやすい。
「創造魔法『蒲公英』」
風の補助魔法。その名に反し凄まじく気を使う魔法だ。効果は風による動作の補助。例えば斬りつける時に腕を風で押して加速したり、体を横から叩いて緊急回避も出来る。否、構想している。
そしてそれ以上に、完全な浮遊状態になる。
全身に風を纏うことで剣を含め体重を極限まで軽量化。更に上昇気流を起こすことで空中に漂い続ける。
魔法の中ではシンボルが少なくて済む補助魔法だが、これを使うにはシンボルが12必要。だが空中にいられることで索敵は容易くなり、制空権というアドバンテージを得る。
加えて、相手に近づきさえすれば
がっぎん!
体重を戻し、上空からの落下速度と風による補助を受けて重たい一撃を見舞う事ができる。
これなら魔法で防御もできない。
だが、音がおかしい。まるで金属同士がぶつかったような‥‥‥。
「術師かと思ったら剣士か。それならこちらも剣で戦わねば無作法というものだ、なぁ?」
その手には逆手に握られた大剣があった。




