第六話 今に戻る
「ここはどこだ…」
ぼくは今、自分の状況がいまいち把握できていない。
ぼんやりと残る姉妹と過ごした記憶。
アイドルを目指して頑張っていた日々。
「あれは確かなものだったはずだ」
冷静になってあたりを見る
「ここは…」
ここは坂道。
だんだん記憶が戻ってくる。
「そうだここにメガネがあって…」
メガネを確認する。
ない…。
かけていない…。
いつもかけていたメガネがない。
「どうなってんだ」
よくわからない。
記憶が曖昧でごちゃごちゃで。
「ぼくは転生したはずじゃ…」
坂道を上る。
ずんずん。
てっぺんに着く。
そこに光るもの。
「あ、メガネだ」
「……」
「お前のせいか」
なんとなくわかった。
「いままでのこと全部お前の仕業なんだな」
「全部夢だったんだな…!!」
そして眼鏡をかける。
赤く見える視界、ふと人影に気付き振り向くと、
アイドル姉妹がそこにいた。
「お前はっ…」
じりじりと近づいてくる姉。
「あなたの息の根を止めるわ」
刀を持った姉。
ぼくに襲い掛かってくる。
「くそっ、お前らは敵だったのか」
「これで終わりよ」
刀でぼくを切りつけた。
「うっ…」
思わず声が出たが、
鋭い刃先はぼくの体をすり抜け何かを切った。
「うん?」
ぼくの体から何かが抜けていった。
自分の一部が抜き取られて消えていった感覚だ。
「はあ、これで大丈夫ね」
「今あなたに憑いてる悪魔を切ったのよ」
「え…?」
確かに切られてから、体が軽くなった気がする。
「そうだ、あなたも一緒に来る?」
「待ってくれ」
「このメガネは何なんだ、君たちの正体もよくわからないんだが」
「ふぅ…じゃあ話しましょうか…」
「このメガネは弟が発明したもので、
悪魔の実体が見えるものなのよ」
「でもそのメガネは弟自身が作った特別製でね、
変な形、してるでしょ…?」
「特別なそのメガネは時を超えて自分が弟として生きる、
パラレル世界にリンクできるのよ」
「つまり弟の記憶の断片の中に入り、弟の記憶を疑似体験できるの」
「なるほど…」
ぼくは話を聞きながら姉妹をよくよく見ていると、
あることに気付いた。
目の前にいるのは、あの時の姉妹の未来の姿だと。
「まあ、あなたの場合は悪魔から刺激を受けて、
誤作動を起こしてしまったのね」
「だからあなたの身に起きたことは、
現実ともいえるし幻とも言える」
「だからね、あなたも一緒に悪魔狩りをしない?私の好きな弟くん」