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第三話 10年後の世界

「ふぅ…」


ぼくはどこにでもいるしがないサラリーマン。


今日も仕事で疲れて、夕方から公園のベンチで寝ている。


「あーうつだ」


「何も楽しくない」


毎日毎日つまらない人生を送ってきた。


会社に行ってはつらく帰りもつらい。

帰ってもつらい。

毎日が同じことの繰り返しで本当に退屈だ。


「子供のころはまだ楽しかったのに」


独り言をぶつぶつ言うが周りには誰もいない。

むしろいない時だからこそこうやって独りごちるのだ。


「彼女はどこにいるんですかねー?」


猫に聞いてもわかるわけがない。


「面白い趣味ってある?」


鳩に聞いてもポッポ。


「この辺に女神とか降りてこないかな…」


草むらにはバッタ。


「………」


「飽きた……」


心も体も疲れた体を何とか起こし。



「帰ってもつまらないけど帰るか」


コーヒーを片手にぼくは自宅への道を歩き出した。



商店街を歩いていると


「じゃじゃーん!」



テレビでアイドルの映像が流れてくる。


姉妹アイドルが何かを話している。


「私たちなんちゃらかんちゃらでーす!」



「アイドルは気楽でいいよな…」


「毎日楽しいんだろうな…」


もごもごと独り言を話して、

さらに憂鬱になって口を閉じた。


「早く帰って寝て楽しい夢でも見るか」


つい口に出た独り言すらむなしくなる。


また自宅への道をとぼとぼ歩きだした。




自宅へとつながる坂道を上っていると。

道端に見慣れないものがある。


「これはなんだ」


道端に落ちている変な形のメガネを拾う。


「ぷっ、変なメガネ」


道端に落ちている割にはきれいなメガネだった。


「掛けてみるか」


変なメガネは、不思議とぼくにピッタリな気がした。


「ん、視界が変な色だな」


メガネをかけると視界が赤色に見えた。

全てのものが赤く見えだした。


鏡で自分のメガネをかけた姿を見たかったが、

手鏡など持っているはずもない。


「変な色でもついてるかな?」

メガネをはずして確認するが、レンズには色はついていない。

透明なレンズだ。

度は入っていない。


「なんだこれは」

不思議と掛けていたくなるメガネ。

自分にぴったりな気がするメガネ。


「ふん、こんなもの」


と思いながらも不思議とそのままつけて、

自宅までの道を歩く。


「ふぅ…」


なんかいつもと違う感覚。

メガネと視界のせいだろうか…。


「ん…」


坂を上り終えた時、

そこにはいるはずのない、

先ほどテレビで見た姉妹アイドルがうっすらと見えた。


「んん…」


目を閉じて深呼吸する。


ゆっくり目を開ける。



「見間違いか…」


「どうかしてるな…」


またしばらく歩みを進める。



自宅近くの公園。


「何だったんだろうなあれは…」


先ほど見えた幻は何だったのか気になっていると、

ふと公園でいじめられている子供が目に映る。


公園で遊んでいる子供が四人いる。

一人はいじめられているようだ。

そしていじめている三人のうち一人がボスのようだ。


「あいつらは今どんな気持ちかな」


気が付くとぶつぶつと独り言を言っていた。


「ぶつぶつ…」



「お前新しいスマホ買ってもらったんだって?見せろよー」


「見せろー、見せろー」


いじめられている子供はスマホをしっかり手に握り、

取られないようガードしていた。



「こいつっ、いい気になりやがって…」


「ぶつぶつ…」


「ぶつぶつ…」


少し目を離していた隙に、

いじめられている子供が、なぜか蹴りを入れられている。


だんだんエスカレートしていき三人で蹴る、殴るをしていた。


さすがにこれは、と思いぼくは言った。


「おいおいそのへんにしとけよ」



ぼくが止めに入ろうとした時、いじめっ子のボスと目が合って…


「…!」


こちらを向くいじめっ子のボスの目が物凄く赤くなっている。

なんなら輝いている。

まるで悪魔の目のようだ。


「うっ、めまいが」


目を見ていたら気分が悪くなって、

ふらふらとその場に倒れこみ、

気を失ってしまう。


「…」



「おじさんどうしたの?おじさーーーん?」


「…」


「お…じ…さんー」



「…」



「お…じ…さ……」



その子供の声が聞こえなくなり、

視界は真っ暗になり、ぼくは完全に意識を失った。


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