第一話 私アイドルになるっ
「捕まえたぞ弟よ」
ある日いつものようにつかまる僕。
「ねーちゃん力強すぎ、いたいいたいって」
スタイルがよく、運動もでき、力も強い姉はつよい。
なおかつ頭も良く、容姿も良く、もてる。
弱点はあったかな…?と考えていると。
「妹が結構遠くまで逃げてるかも、探して捕まえて連れて来て」
確かに遊びが始まってから、妹の姿は見ていない。
逃げる範囲は決めているから、そこまで遠くということはないだろう。
「最近は妹も体力ついてきてるからな」
そう、最近の妹は日を追うごとにどんどん成長しているのだ。
昔の妹の体力不足を思い出せないほどに。
「ところでねーちゃんが捕まる選択肢は?」
「ないね」
数秒も経たずに即答を受ける。
「じゃあせっかくだから、久々に妹が鬼で終わってもいいんじゃないかな」
いつも僕が鬼のまま終わるから、たまには妹が鬼で終わってもいいだろう。
「うーん…」
姉は考える。
姉の頭の中では妹が鬼で終わる日が週一と決まっている。
そして今日は、妹が鬼で終わった日から一週間以上経っている。
「仕方ないな、よし今日は許してやる」
姉のお許しが出たので僕は妹を捕まえに行く。
「妹はどこにいるかな」
いろいろなところを見て回るがいない。
途中犬に吠えられたりしたが、軽くあしらった。
そしてあるお店の前で妹を見つける。
「あ、見つけた」
大きな声で言ったのに、妹は本を夢中で読んでいるのか僕の声に反応しなかった。
これはチャンスだと思い、妹の背後に迫り手を肩にかける。
「はいタッチ、捕まえたぞ」
妹を捕まえたが、抵抗することもなく笑っている。
「どうした?」
「…」
「やーい、おにだおにだー」
ちゃかしながら気を引こうとするが、無言でこちらを見て笑っている。
ちょっと不気味だった。
「何か言ったらどうだよ」
「…」
その時、同じく妹を探していた姉もこちらにやって来た。
「どうしたの?」
妙な雰囲気を感じ取ったのか、姉は不思議そうな顔をしている。
笑いながら何も言わない妹が姉を見つけると、姉のほうへ駆け寄って言った。
「私鬼じゃないよ、アイドルになるっ」
ぽかーん
静まり返るみんな。
妹は周りの影響を受けやすい。
昔から興味を持ったら何でもやっていくタイプだ。
おそらく何かに影響を受けて、こんな事を言い出したのだろう。
「…」
静寂が流れたのち。
姉は妹に甘い。
ここは僕が…と気張って言った。
「じゃあどうすればアイドルになれんだよ」
妹は何も言い返さなかった。
が、姉は考えてから言った。
「その方法を見つけるために皆で研究して努力するのよ」
「……!」
姉の一言でみんながやる気になる。
昔からよくあるいつものことだ。
それから三人の特訓が始まった。