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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
フタガの岩峰のハーピー

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第80話.不可解な行動

 次々と倒されるハーピーキャプテンを見て、タカオの街へと引き返すハーピージェネラル。


 しかしハーピー達は、ジェネラルを逃がす為なのか、さらに激しく突撃してくる。獰猛な笑みを潜め、何かに取り憑かれたかの様な必死の形相に変わっている。


 そしてハーピー達は集中して、俺を狙ってくる。躱されても再び空には舞い上がる事は考えていない。一切の減速する事はなく趾の爪を伸ばし、少しでも傷つけようとしてくる。上位種の支配下にあった方が獰猛になり、今の直線的な動きがハーピー本来の姿なのかもしれない。


「バーレッジ、バーレッジ」


 ひたすらに弾幕を張り、ハーピー達の勢いを削ぎ、翼を傷付ける。運良く避けた者や傷が浅かったハーピーには、ダークのマジックソードが襲いかかり次々と致命傷を与えてゆく。


 2枚のマジックシールドが消え、再度マジックシールドを展開させる。マトリは俺の体の魔力の流れを整え、再構築までの時間を少しでも短縮する。

 その間に、俺の前には大きなヒーターシールドが現れる。


「この魔力は、ミュラーか」


「ハーピーの起こす風ですら、遮ってご覧にいれましょう!」


 特に俺だけを狙った攻撃が、精霊達を少し怒らせている。精霊達には、召喚されて活躍する場合と、俺の中で体の一部となって活躍する場合がある。力が落ちているミュラーではあるが、召喚されることを選んだようだ。


「油断しなければ大丈夫だぞ!あまり手の内は見せるなよ。本体から応援が来るかもしれない」


 ハーピー達は次々と空から落とされ、地上でも立っている者は少ない。ジェネラルは本体へと合流し、次の動きに注視する。



 ハーピー達が一斉に街へ突撃しているが、それと反して幾つかのハーピーは背を向けて引き返して行く。


「逃げたのか?」


『普通のハーピーの速度では巣穴に戻るには、そろそろ時間的にも限界かしら。可哀想だけど、下位のハーピーは使い捨てにされたわね』


 それなら俺に襲いかかってきたように、熾烈な特攻を受けているかもしれない。


「死ぬまで止まらないだろう。犠牲も増えるだろうし、タカオの街に急ごう!」


 しっかりとトドメを刺しながら、タカオの街に向かう。急降下したハーピー達は、再び壁の上に姿を現す事はない。俺達と同じなら、何かの目標に向かって特攻をかけられている。



 タカオの街の西門にたどり着くと、門は開けられたままで、ハーピー達の気配は感じられない。門番がいたはずだが、傍には誰もいない。

 そして、門から広がる光景。破壊された建物と、血まみれのドワーフや獣人達。今までは、魔物が相手だっただけに衝撃が大きい。


「残念ダケド、助カルノ少ナイ」


「救える命だけでも助けよう」


 誰も出てこない街の中で、俺達だけが破壊された瓦礫の前に立つ。


 ここタカオの街は、武器や防具を求めて様々な種族が集まってくる。それぞれが商売敵になる為、出し抜く事はあっても協力する意識は低い。それがこの現状を表している。


『どう、アシスを嫌いになったかしら?』


「残念だけど、アシスも元の世界も変わらないよ」


 クオンの探知で瓦礫の下の生命反応を見つけて瓦礫をどかす。そしてブロッサは、怪我の程度を見て回復が可能か否を判断を下して、ポーションで適切な処置を行う。


 俺達が救出活動を初めると、やっとパラパラと人が出てくる。ただ隠れていたのか、周りの様子を伺っていたのかは分からない。それでも頭数が多い方が、助けられる生命も増える。


 しかしここはドワーフの街。瓦礫の下から武器なども多く埋もれている為に、どうしても慎重にならざるを得ない。

 ここで活躍するのがハンソ。ハンソの体にキズを付けるには、相当の業物が熟練されたスキルが必要になる。気配の無い所では、その頑丈な体と力が活きてくる。

 そして瓦礫を持ち上げた時に、その中から水晶のような玉が落ちてくる。


 その瞬間、廃鉱で見た光る玉を思い出す。


「何の為にオルキャンは、光る玉を造っていたんだ?」


 不思議そうな顔でムーアが答える。


『神剣を造る為じゃないの?ラミアに魅了されて、まともに判断出来る状態ではなかったけどね』


「もしかしたら、光る玉そのものに利用価値があったんじゃないか?」


『照明くらいにしかならないんじゃないの?』


「オルキャンの部屋の近くでは、光る玉が照明として使われていたけど、他の坑道では松明が使われていた。変だと思わないか?」


『廃鉱じゃない別の場所で、照明として使われているって事?』


「光が無いと行動できない魔物がいるだろ!」

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