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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
フタガの岩峰のハーピー

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第79話.ハーピーとの初戦

「キエェェェー、キエェェェー」


 次第に奇声がはっきりと聞こえてくるが、ハーピーが何をしゃべっているかは理解出来ない。やはり俺が分かるのは、ゴブリンの言葉だけになる。


 そして、ハーピーの姿がはっきりと見えてくる。声の感じや表情からすると、獲物の多かった街から外された事で怒っているのかもしれない。弱いものをいたぶってやるという歪んだ愉悦を取り上げられて、上司に不満をぶつけているようにも見える。


 パッと見では上位種の存在は分からない。これだけの数なら、率いている上位種が必ず何体か居るはず。


「ナレッジ、上位種が分かったら教えてくれ」


「分かったよ、僕に任せて!」


 ゴブリンの時と同じでボスを狙う。そうすれば、集団としての機能は停止するはず!


 ハーピー達は徐々に速度を上げて近付いてくる。最初こそウィスプ達の放った遠距離攻撃を気にしていたのかもしれないが、俺達の数が少ないと分かると我先にと抜け駆けするように速度を上げる。


 地上付近を飛んでくるハーピーの先頭集団は獰猛な笑みを浮かべている。最前列に居るのは斧を持ったオニと、岩の塊の精霊の2人。魔法適正の低いオニ族には、驚異となる遠距離攻撃の手段はない。

 そうなれば獲物は早い者勝ちになると踏んだのか、直線的に突っ込んでくるハーピー達はブロッサの仕掛けたポイズンミストにかかり、次々と地面へ墜落する。ここから見えるだけでも、先頭集団は壊滅的な状況に近い。

 ただ先頭集団の風がポイズンミストを撒き散らしたお陰で、結果的には遅れたハーピー達を助けた事になっている。


「グラビティ」


 しかし、ポイズンミストを抜けたハーピー達は、今度はソースイの重力操作の餌食になる。急激な変化に、上手く飛ぶ事が出来ない。趾で人を掴んで飛ぶ事が出来ても、自分自身の体重が5倍になり当然動かす翼も思い通りにはならない。

 何とか無事に地面に着地しても、そこにハンソの投げた岩が降ってくる。もちろんグラビティの範囲内に入れば、投げた岩の破壊力はさらに増す。



 上空では、またウィスプ達が連携して魔法を放つ。今度は、鉱山で見せた広範囲魔法。雷の球が上空で炸裂する。

 雷の球に溜められた魔力は、バチバチと音を立てながら時間をかけて放出される。ハーピー達を痺れさせるか翼を封じれば、後は地面へと落下するだけ。後は、ルークは近接戦闘、メーンは狙撃、カンテは広範囲魔法と各々が自由に戦いを繰り広げる。


「見つけたよ!」


 戦闘の最初の激突が終わると、ナレッジが上位種を見つける。そして情報がベルのスキルを通して全員に伝わる。

 見つけた上位種は2つで、1つ目が羽根の色と趾の色が濃いピンク色になった個体が3体。2つ目が全身赤色の個体が1体。恐らく濃いピンク色がキャプテンで、赤色がジェネラルになる。


 キャプテンはハーピー達の奥に居る。先頭にたって率先して突撃するタイプではないみたいだが、用心深いのか臆病なのかは判断はつかない。


「キャプテンまでは、少し距離があるな」


 そう呟くと、翼が羽ばたき体が宙に浮く。


『士気高揚』


 そして、ムーアが俺の能力を底上げしてくれる。制御出来る限界まで魔力を流し、魔法を発動させる。


「ウィンドトルネード」


 ハーピーキャプテンを目掛けて放った魔法は、途中にいるハーピーを巻き込みながら奥へと進む。

 躱そうと避けたつもりのハーピーキャプテンだったが、ウィンドトルネードが後を追いかけてくる。この魔法の強いところは、魔力を流し込んでいる間は魔法が発動してくれる事。俺の魔力量には際限がないから、後は制御する能力次第。

 そして、当たってはいないくてもトルネードの負圧がハーピーキャプテンの翼を巻き込み、バランスを崩させる。バランスを崩した分だけ高度が下がり、そこに待ち受けていたダークによって翼を切られ、首をはねられる。


 ソースイ達もウィスプ達も、それぞれハーピーキャプテンを追い詰め、気付けば残っているキャプテンはいない。しかし、奥にはハーピージェネラルが控えているせいか、ハーピーキャプテンが倒されても混乱は起きていない。


 ここからが仕上げと、ハーピージェネラルに接近するが、ジェネラルはハーピーを残して本体へと戻ってしまう。そして残されたハーピー達の突撃は熾烈なものに変わる。


「逃げたのか?」

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