閑話8.フォリーの決意
ヴァンパイアは日の光がある場所では生きられない。
属性には、相性の良い・悪いがある。闇属性であったなら、光の下でも存在出来た。影属性ならば、もっと問題なかった。
しかし、私達は陰属性。日の光と共存する事は出来ない。複数の月が存在するアシスでは、夜でもそれなりに明るく、地下深くで生きるしかない。
月は綺麗で心を癒す効果があるらしいが、ヴァンパイアで月を見たものは誰もいない。
臆病なマトリだけど月には憧れがあるみたい。注意はしているけど、心の中まではどうしようもない。私とダーク兄さんで、絶対に見せないように監視するしかない。
月明かりも駄目なヴァンパイアだけど、闇の中では大きな力を持つ。日の光の中では生きられないという代償を払う事により、大きな力を得たと長老様が教えてくれた。
なぜなら地下には魔物や魔族が居る。何故か魔物や魔族も日の光から隠れる。
だからダンジョンも地下へと作られる。地上や空に昇るダンジョンはアシスには無い。
そして魔物の存在が、ヴァンパイアに力を必要とさせた。
地下へと侵入してくる魔物。力が強い魔物程、地下深くへと潜る。
私達は強い魔物に対抗するだけの力は無く、地下深くから逃げるように地上付近を目指した。
何とか上層まで辿り着く事が出来たし、流石に魔物も弱くなった。これでしばらくは大丈夫かと思ったが、その期待はあっさりと裏切られる。
ある日突然、壁が崩れて日の光が射し込んだ。ほとんどのヴァンパイアは日の光を浴びてしまい倒れる。
気が付けば、違う洞窟に移されていた。日の光は射し込まず闇の中であるのに、鎖で縛られている身体には力が入らない。
今は我慢するしかない。この鎖から解放されても、逃げる場所はない。地上に出れる訳ではないし、ましてや洞窟の奥深くに逃げる事も出来ないだろう。
今はまだ時間はある。考えるのよ!そう自分に言い聞かせて、変化が訪れるのを待っていた。
そして突然、その日は訪れる。
現れたのは精霊を連れたヒト族。そして、そこに居るのケットシー!そしてヒト型になったケットシーが私に抱きついてくる。
何があったか分からないが、助かったと思った。しかし、少しだけ考えは甘かった。
ケットシーと一緒に居るのは、酒と契約の精霊。そして私にこう告げた。
「全てをカショウに捧げるなら、助かる道があるわよ」
思わずケットシーの顔を見る。
「カショウと契約してるの。だからカショウは大丈夫なヒト。そして私は1番精霊のクオン」
満面の笑顔を見せてくるクオン。
「だけど、裏切りは絶対に許さないの!」
その言葉には殺気がこもり、私は凍り付く。だけど生き残るには、それしか方法がない。
「分かったわ。全てをカショウ様に捧げます」




