第72話.最奥での戦い②
魔物を倒す為には、どうしたらよいか。
コボルトでもメタルコボルトでも全ての魔物で共通し、1番確実な方法は魔石を破壊すれば良い。そしてコボルト魔石の位置は心臓部。上位種が居ないのであれば、魔石の位置も似ている場所にあるはず。
しかし、メタルコボルトの身体は金属で出来ている。それもソースイの全力の一撃でも、かすり傷が付く程度。
「厄介な魔物を造り出したな」
『そうね、それにオルキャンも不気味よ』
自らの手をかける必要はないと言いながら、しっかりと俺達の様子を窺っている。やはり鉱山での戦いで、しっかり警戒されている。
「ムーア、もう1回フランベ出来るか?」
『出来るわよ。何か思い付いたの?』
「試してみる価値はあるかな」
ウィスプ達をのサンダーボルトを受けると、メタルコボルトの動きは止まる。衝撃でバランスを崩して膝を突くが、再び立ち上がり前へと進み出す。やられても、やられても少しずつ前に進む様はゾンビといった感じがする。
「ブロッサ、ポイズンボム!」
「ゲロッ」
ブロッサのポイズンボムが、メタルコボルトの顔面に直撃する。毒は一瞬にして蒸発して無くなり、何事も無かったかのように動き出す。メタルコボルトの足止めにはならない。
『やっぱり効果はないわね!』
コボルトが前に進むにつれ、ウィスプ達の攻撃も激しくなる。
「そろそろ頃合いかな。ムーア頼むよ!」
ムーアが御神酒をコボルトの足元に投げる。
『酔眼朦朧』
メタルコボルトの周りにアルコールが充満し、一瞬にしてコボルトの全身が発火する。そして俺も、火オニの短剣に魔力を流す。
「ファイヤーボール」
それでも、コボルトの動きは止まらない。燃え上がるコボルトの奥に、ほくそ笑むオルキャンが見える。
「そろそろだと思うんだけどな?」
更に魔法を重ねがけしていくと、コボルトの動きに少し変化が出る。バランスを崩しても、すぐに立ち上がれない。膝だけではなく手も突き、倒れるのを堪える。
地面に突いた手を、メーンのサンダービームが撃ち抜く。完全にバランスを崩したコボルトは、前のめりに倒れる。起き上がる事の出来ないコボルトへ、更に集中砲火を浴びせる。
するとサンダーボルトで、コボルトの身体に穴が出来始める。そして少しずつではあるが、コボルトの身体の消滅が始まる。
『どうなったの?』
「魔石が熱に耐えられなかったんだよ」
『何でそれが分かったの?』
「普通のコボルトと魔石の大きさが変わらなかっただろ。込められた魔力は強くても、魔石自体は強くないはず。ゴブリン達でイロイロと経験してるからな!」
残るは、ソースイとハンソが相手にしているメタルコボルト。
倒し方が分かれば、こちらも時間の問題だと思う。メタルボディのコボルトは重量がある。ソースイのグラビティの前では格好の餌食になる。
重い体がさらに重くなり、そこにハンソのハンマー攻撃で倒される。そしてソースイのグラビティを纏った斧が心臓部を目掛けて追撃を入れる。
身体のキズは軽微でも、中の魔石は衝撃に耐えられず、身体が消滅していく。
「おっさん、終わったぞ!」
オルキャンの、ほくそ笑んだ顔が引きつった笑みに変わる。
「俺様の100年が~っ!」
『“余”から“俺様”になったわね』
「造ラレタ偽物、長続キシナイ」
ムーアとブロッサの会話に、オルキャンが切れる。
「お前ら、皆殺しにしてやる。精霊どもは、コボルトの糧にしてやるわ!」
目の前の剣を引き抜きく。右手の剣は天を指すように掲げ、左手は横に広げる。
そして、そのまま真上を見上げ動かなくなる。
「完全に自己陶酔してるな。決めポーズを練習してるタイプだと思うな」
『100年も練習してるの?ちょっと気味悪いわね』
「俺様を馬鹿にするのか!低俗な者には、この神剣の美しさが分からんのだ!」
オルキャンが抜いた剣は、鍔の中央には光る玉が埋め込まれている。しかし感じられる魔力は、坑道に置かれていた光る水晶玉と同じ。特別なマジックアイテムとか、特殊な武器といった印象は受けない。
「何が凄いか分かるか?」
『魔力的な凄さは感じないわね』
「良く鍛えられた鋼鉄の剣でございます」
ブレスレットの中からミュラーが教えてくれる。
「ミュラーが言うなら間違いなく、程度の良い光る鋼鉄の剣だな」
そしてオレキャンが横に広げていた左手を上に動かし、両手で剣を握る。
「ライトニング・メテオ」
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