閑話14.ナレッジの恋
閑話が続き、本編の再開は6/22からになります。
彼女にお願いされた瞬間に、僕は恋をした。精霊同士でも恋をすることは希にある。滅多にないことではあるし、まさか僕が恋をするなんて思わなかった。
しかも空間を司る“空属性”の僕が、相反する属性の精霊に恋をするなんて。これが他の精霊にバレてしまったら、僕は存在してゆけない。
でも、どんな願いであろうと断る理由なんてない。そんな事で変わるようなら、それは恋ではない。
そんな彼女の願いは、ブレスレットとアンクレットの中に空間をつくる事だった。ブレスレットとアンクレットは、それぞれ2本ずつで合計4本。
アンクレットは彼女のもので、ブレスレットは仲の良い精霊に贈るらしい。その精霊は妹のような存在で、彼女を護るための道具でもあるらしい。それを聞いて少し安心した。贈る相手が恋人ではなければ、それだけで良かった。
しかし、4つアイテムにそれぞれの空間をつくる事は、想像以上に難しい。しかも一時的なものではなく、恒久に近い時間を維持しなければならない。
これが、寿命のある生き物なら簡単な事だろう。寿命よ少し長くなるように、魔力を込めて魔法を維持するだけで、恒久に持つマジックアイテムといえるだろう。
だが、精霊が持つとなれば寿命に終わりはない。それを4つ同時に行うのだから、それは不可能に近い。上位精霊くらいの力があれば可能かもしれないが、僕はまだ中位精霊の力しかない。
だけど僕は何としてもこの願いを叶えたかったから、それを可能にする為の方法を提案したんだ。
1つ目は、4つそれぞれに空間をつくる事は難しいので、1つの大きな空間をつくり、内部で仕切ること。
2つ目は、アンクレットに僕が宿り、常時魔法を発動すること。
1つ目の提案は問題なかったが、2つ目には顔色を曇らせた。僕を永続的に拘束してしまうような事は出来ないと言われた。
良かったと思った。僕が宿ったアンクレットは気味が悪いと拒否されたのではない。だから、3つ目の方法を提案する。
アンクレットに宿る代わりに、僕をイロイロな場所に連れていって欲しい。空属性の精霊は滅多に移動する事はない。だから、イロイロな場所を見たいんだとお願いした。
それならばと、彼女はこの提案を受け入れてくれた。
そして僕の旅が始まった。しかし、彼女の姿は突然消えてしまった。何かが起こったのは間違いないが、何があったかはアンクレットの中からでは分からない。
そして、彼女が消えたことの喪失感は大きかった。 だけどアンクレットの中には、まだ彼女の魔力が残っている。イロイロな場所を見たいと言ったが、もう僕が外の世界へと出るとこはないかもしれない。
どれだけの時が流れたのだろうか、それも分からない。しかし、どことなく彼女に似た魔力が色鮮やかな記憶を甦らせ、僕の目を覚ます。似てはいるが少し違う、でも懐かしい匂い。
まさか、もう一度僕の作ったブレスレットに出会うとは思わなかった。もしかしたら、彼女を探す手掛かりとなるかもしれない。そんな望みが、期待が僕の胸を埋め尽くす。
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