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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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閑話13.ミュラーの焦り

 中位精霊であるだけでなく、私の力はアシスで生きる者にとって有用である事を知っている。


 精霊の力も様々で、火·水·地·風の四精霊のように直接的に力を行使し影響を与える精霊と、そうではない精霊がいる。


 直接的な力を行使しなくても、私はアシスの中で有用な金属の精霊。生活に必要なものでもあれば、武器でもあり防具でもある。その影響力だけを考えると、四精霊を遥かに凌駕する。


 アシスの厳しい世界を生き抜く為に、どの種族も私の力を求める。そして私と召喚契約できる者は、多大な恩恵を受ける事が出来る。それは栄誉な事でもあるが、時には争いの火種をももたらす。


 今まで数度だけ召喚契約をした事があるが、そのどれもが良い結果をもたらすことなく、最後は破滅で終わっている。

 金属の精霊である私が関係すれば、小さな振る舞いでも世界を大きく変えてしまう。この世界に新たな火種を生まない為にも、簡単に召喚契約する事はない。


 だが、私の存在が消滅しかかる中での、やむを得ずヒト族と契約を結んだ。同じ中位精霊である酒や毒の精霊が契約しているのであれば、悪くはないのかもしれない。

 それなりの力があるのだという事は想像できたが、契約して初めて知る事になった。


 カショウという名のヒト族は、明らかに異質な存在。底の見えない魔力に、契約している精霊の多さ。

 そして物質化魔法で剣や盾を具現化して操る。まだまだ武器や防具としての力は低いが、驚かされたのは着ているチュニック。


 魔法で全体の形を作っているのではなく、繊維の1本1本を魔法で作り出している。

 この力は一体何なんだ?目の前には理解する事も出来ないが力がある。私の力は、繊維の1本にも遠く及ばない。それが私の矜持をズタボロに切り裂く。


 そして、気付いてしまう。こんな事が出来るスキルがあるのならば、ヒト族にとって私の存在なんて必要ない。

 アシスで有用な存在である私が、ちっぽけな存在に見えてしまう。このままでは、私は忘れ去られてしまう。そう考えると、何とも言えない焦燥感が襲う。


 私は何が出来るのだ。何が出来れば、このヒト族に私の存在を意識させる事が出来るのだ?


 まだ、ヒト族は自分のスキルについて気付いていない。それどころか、私が作り出すかもしれないミスリルやヒヒイロカネ、オリハルコンに思いを巡らせている。


 これが出来れば、私はこのヒト族にとっての理想の精霊となるのだろう。しかし、今はその力を失っている。それに力を失う前でも、具現化出来るのはミスリルまでなのだから。


 しかし力を取り戻すまでには、どれだけの時間が必要なのだろうか。このヒト族と契約している精霊は多い。しかも、同時に召喚し維持している。


 ハッキリいって異常だ。こんな事は、あり得ない。それに、まだまだ契約する精霊は増えるだろう。


 力の回復を待つ余裕はない。何かをしなければ、間違いなく忘れ去られる。


 私には何が出来るんだ、何をすれば存在を主張出来る。

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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