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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第181話.七色の魔石とクオン

これで序盤部分が終了となり、閑話を挟んで新章の予定となります。

 右手に持つ魔石が放つ七色の光は、俺の中にに侵入しようとしているのか、絡み付いて離れない。魔石を地面に置いても、光は纏わりついたままで離れない。


 再度、魔石を拾い上げる。


「マジックナイフ」


 左手にナイフを顕在化して魔石に近付けると、何も無かったかのように光は消える。


『魔石にリッチの核は、もう無いんでしょ』


「ああ、もうこの魔石にリッチの核となる部分は残っていない」


 しゃがんで左手で崩れた壁の細かい砂を掬う。砂の臭いには、微かにリッチの臭いが混ざっている。力を失い消滅した魔物の核は、あまりにも小さすぎて目で見ることは不可能で、ゴブリンキングの嗅覚スキルがないと存在を確認する事は出来ない。

 この一掬いの砂の中のどこかにリッチの核があり、放っておけば何百年後か何千年後という期間で再びリッチは復活するだろう。


「リッチが存在しなくなっても、魔石が意思を持って行動する事ってあるのか?」


『そんな事はあり得ないわ。それじゃあ、アシスの理に反していまうもの』


「という事は···。この魔石は別の魔物って事になるのか?」


『そうなるわね。もしかしたらリッチがこの魔物に寄生されていたのかもしれないわ』


 左手のリッチの核を感じ取ったのか、魔石の光が左手のを目指して移動を始める。


「勝手に動いてんじゃないぞ!」


 再びマジックナイフを近付けると、また何も無かったかのように光は消える。脅されたら大人しくなり、同じことを繰り返す学習能力のなさ。


『ちょっと、頭は悪そうね』


「リッチが知ったら、多分立ち直れないだろうな。全てを利用するつもりで、こんなのに利用されてたと知ったら、俺なら恥ずかしくて生きていけない」


 少しずつリッチの魔石の臭いが薄くなってゆく。地面に戻すと、もうこのリッチが姿を見ることはないような気がする。


「もう危険はないだろうな」


 どこからともなく風が吹き、左手の砂を飛ばす。これで、もうリッチを見つける事は出来ない。これがリッチの最後に振り絞った力なのかもしれない。


 そして、残された魔石にガーラが興味津々で近寄って来る。咥えたそうにしているのは分かるが、クオンもガーラに横取りされまいと体を割り込ませてくる。


「クオン、大丈夫か?持ってみるか?」


「うん」


 満面の笑顔で両手を出してくる。俺と契約している精霊なら魔石の影響は受けないと思うが、それでも万が一という不安はある。


 そっとクオンの手の上に魔石を置く。もしクオンに何かするようなら、躊躇う事なく破壊する。クオンにマジックナイフを向ける事は出来ないが、それでも万が一に備えての用意は出来ている。


 クオンは手よりも大きな魔石を両手でしっかりと掴む。まだ妖しい七色の光は輝きは放たないが、同じ事を繰り返す魔石に油断は出来ない。しかし、クオンが急に魔石に顔を近付ける。


「クオン、危ないぞ!」


 慌ててクオンに声を掛けるが、クオンの動きは止まらない。魔石に魅入られてしまったのか、それ程までに魔石の力は強かったのかと後悔する。

 マジックナイフを手に取り構えるが、クオンの顔が近くて一瞬躊躇う。


「ダメッ!」


 そこに、クオンの声が響く。短い言葉だが、感情がなく冷たく刺さるような声と感情の無い表情。一瞬で俺達の動きは止められてしまう。しかし、その声は俺達以上に魔石にへと直接響き、魔石が小刻みに震え出す。


「もう大丈夫♪」


 さっきの声が何だったのかと思わせるように、いつものクオンに戻っている。


「そっ、そうか、クオンが大丈夫って言うならイイけど、危なそうだった言うんだぞ」


「うん、ちゃんと言うこと聞くように教えるから大丈夫♪」


 何をどうやって教えるのかは分からないし、聞いてはいけない気がする。それにムーアも首を左右に振って、“諦めなさい”と意思表示している。

 それに魔石が悪影響を与えるのは間違いないく、俺が保管して外に出さないのは悪い方法ではないのだろう。


「クオン、だけど影の中だけで外に出したらダメだぞ」


「うん、分かった♪」


 クオンの満面の笑顔が、戦いの疲れを癒してくれる。只でさえ、影の中にいる事の多いクオンで、しかもヒト型の姿を見ることは少ない。

 その貴重な姿に癒されていると、急に鼓動が激しくなる。目がかすみ、折角のヒト型のクオンの姿がハッキリと見えない。そして頭が割れるように痛み、立っているのかどうかも分からないが。


「天之美禄の後遺症なのか?」


『そうよ後は私達に任せて、しばらく頑張って!』


「しばらく休んでじゃないんだな」


 そして、俺の意識はここで無くなる。

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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