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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第179話.リッチ戦④

『天之美禄』


 高らかに声を上げるムーアに、とてつもなく嫌な予感がする···。

 いつも通りの士気高揚で十分。後もうひと押しが欲しいだけなんだ!という俺の思いは届かず、得体のしれない力が漲ってくる。

 これは危険なヤツだと分かるが、発動してしまった以上もう戻ることは出来ない。


「ヴオオオォォォォーーー」


 そして、ソースイが雄叫びを上げる。無口なソースイにしては珍しく、完全に天之美禄の影響を受けている。こうなれば、今ここで決着をつけるしかない。


「グラビティ」


 ソースイが黒剣を振り上げ、全力の一撃を叩きつける。切るつもりは全く感じれない、斧で戦っているかのような力任せの攻撃。どうせサークルシールドで受けられてしまうなら、全力の一撃をぶつけてしまえと開き直ったような感じがする。


 バギィィィーーイイ


 しかし、その考えは違った。漆黒の盾が重力を減衰させるなら、黒剣は重力を増幅させる。ソースイのグラビティの威力が増幅される事で、クラビティを纏った黒剣の適正な攻撃を行ったに過ぎない。


 リッチは、1枚のサークルシールドでは威力を殺すことが出来ず、複数枚を合わせて黒剣を防ぐ。

 それでも、今までにない距離までシールドを押し込む。あと1歩で、リッチに攻撃が届く距離!


「ナルキ、ダーク。突き破るぞ!」


 後は、3人の刃を1点に集める。硬質のシールドは俺とナルキ、軟質のシールドはダークが破ればイイ。


 硬いシールドを貫く感触と、柔らかいシールドを切り裂く感触が伝わってくる。破られたシールドは、その存在を維持出来ずに、1枚また1枚と砕け散る。


 ジワジワと切っ先がリッチへと近付き、あと半歩のところまで来る。


 しかし、砕け散るのはシールドだけではない。それは俺達も同じで、損耗に耐えれなくなればマジックソードも紫紺の刀も砕け散ってしまう。

 曲がったり折れたりすのではなく、強化ガラスのように急に粉々になって砕け散って消えてしまう。だから、折れ残った刀身を叩き付ける事は出来ず、存在するかしないかの2択にしかならない。


 パキンッ、パキンッとシールドだけでなく、マジックソードと紫紺の刀も砕け始める。

 当然、3本あるマジックソードに対して、紫紺の刀は2本しかなく、このまま行けば先に紫紺の刀が消滅してしまう。


 パキンッ


 あと10cm。そこで紫紺の刀は砕け散ってしまい、残されたのは俺の持つマジックソードのみ。


「届け~!」


 ドンッ


 しかし、俺のマジックソードは軟質のシールドに阻まれる。軟質のシールドが変形する事で切っ先がリッチ近付くが、小指の先程の距離が届かない。さらにナルキがマジックソードの柄に巻き付き、リッチへと押し込む。


 少しずつ切っ先がリッチに向けて進むが、次第に動きが鈍くなってゆく。


「ヴオオオォォォォーーー」


 ソースイを真似て雄叫びをあげてみるが、マジックソードは微動だにしない。少しずつマジックソードが押し返され始める。その瞬間、フォリーが足元の影から出てくる。


「シェイドォォーーー」


 フォリーの渾身のシェイドが、軟質のシールドを破壊する。シールドの束縛から解放されたマジックソードがリッチの顔面を捉える。


 キッーーーーン


 しかしリッチの寸前で、マジックソードがシールドに阻まれる。硬質のシールドのはずだが、破壊する事が出来ない。


 パキンッ


 そして限界に達した、マジックソードは砕けてしまう。


「残念だったな、これで手詰まりだ。全部が同じシールドと思うたか?もう同じ手は通用せんし、お前達の負けじゃな!」


「良く喋る骸骨だな。誰が手詰まりだって?」


 今度は影の中から、クオンが飛び出してくる。手には光る短剣を持って、リッチへと突き刺す。


 キンッ


 しかしシールドは、びくともしない。それどころか短剣の方が刃こぼれしてしまう。


「驚かせおって。それが切り札のつもりか?」


「ああ、そうだよ。俺の最後の切り札だ!」


 クオン持つ短剣は、オルキャンが作り出した光る鋼鉄の剣。折れてしまった剣を、短剣の長さにつくり直したものになる。


 これが、リッチを倒す最初で最後のチャンス。ゴブリン達を利用したリッチを倒したければ、ゴブリンロードよ、俺に力を貸せ!


 すると右腕に力が漲る。これがゴブリンロードが拘っていた右腕の力なのだろう。クオン持つ短剣を、クオンの手ごと掴む。


 光る斬撃よ、リッチを撃て!

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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