第178話.リッチ戦③
ドンッ
俺のマジックソードと、リッチのサークルクシールドがぶつかり合うが、サンドバッグを叩いたような鈍い音がして、衝撃が吸収される。
やはり無属性魔法を使うとは思っていたが、最初に使ったマジックシールドとは少し違う。今度のマジックシールドは柔らかく変形して、俺の攻撃の威力を吸収する。
そして衝撃を吸収するだけではなく、変形した反動を利用して俺の攻撃は跳ね返してくる。もちろんマジックシールドに傷1つを付けることも出来ていない。
無属性の上位スキルである魔力吸収まで使えるようになり、無属性魔法には少し自信が出てきていた。それだけに無属性同士のぶつかり合いで、跳ね返されたショックは大きい。しかし、ここで気落ちして手を緩めるわけにはいかない。
それはそれで最初から計算済みでもあり、俺を補うようにダークの紫紺の刀がリッチの頭上から、ナルキのマジックソードが横から襲いかかる。
キッーーーーン
ドンッ
しかし、それもサークルシールドに防がれる。ダークの紫紺の刀は最初に見せていた硬いマジックシールド、ナルキのマジックソードは柔らかくマジックシールド。
俺の攻撃を防いだマジックシールドと合わせても、すでに3枚のマジックシールドを展開している。
さらにはマジックソードと紫紺の刀で、受けるマジックシールドの質を変えている。
俺の魔力の質は硬いらしいが、俺が物質化魔法で造り出す物は全て硬い。しかし、リッチは両方を使い分けする事が出来る。
こういう時には、経験や熟練度の差が出てしまう。魔力の質が硬いからといって、それだけしか使ってこなかったのは反省するべき点なのだろう。
「小僧、さっきまでの威勢はどうした。悔しくて言葉もでないか。当たりもしないし近付くことも出来んようじゃ意味がないの!」
「壁の中にめり込んでるくせして良く喋るな。時間稼ぎしてるつもりか?」
「事実を言ったまでじゃ。お前達相手じゃ、最初からお遊びにしかならん」
「そうかい、それならお遊びに付き合ってもらうよ」
俺の1番の強みは、1人じゃ無いこと。俺とダーク・ナルキの攻撃が防がれたのなら、次は手数を増やせばイイ。
2枚あるマジックシールドを1枚にして、マジックソードを3本にする。
俺が1本で、ナルキが2本。そして、ダークの持つ紫紺の刀が2本の合計5本。その内1本でもリッチに届けば、俺たちの勝ちになる。
中央は俺で、ナルキが左右に腕を伸ばし、ダークが上から狙う波状攻撃。
それでもダメなら、さらにはマジックシールドを減らして手数を増やす。今のリッチの攻撃くらいなら、ミュラーが守ってくれる。
そして、3人一斉にリッチへと襲いかかる。声に出さなくても精霊達に意思は伝わるのだから、攻撃のタイミングもズレる事は無い。
キッーーーーン
ドンッ
しかし何回試しても、同じ結果を繰り返してしまう。全ての攻撃が的確に止められ、リッチの宣言通りに近付くことも出来ない。
リッチは壁にめり込んでいるせいで、どうしても攻撃は前方からに限られてしまうが、それでも圧倒的な力の差を痛感させられる。
サークルシールドを1度具現化すれば、それ以上魔力を消費しないし。時間をかければ、それだけリッチの魔力が回復してしまう。
時間はかけれないが、今は同じ事を繰り返すしか出来ない。もしダメなら洞穴自体を崩落させて時間稼ぎをすればイイと、最悪の選択肢も頭をよぎり始める。
キッーーーーン
ドンッ
何回目だろうか。ナルキとダークがスイッチして攻撃したり、同じ側面から攻撃してみたりと、思い付く事は試してみたが結果は変わらない。
そして時間をかけた分だけ、リッチの回復が進んでしまう。
「どうした、それで終わりか。もう打つ手はなしじゃな」
頭蓋骨だけで表情は分からないが、声には余裕がある。しかし、手数を増やす方法は残されている。
「最後だ。ソースイ、黒剣で援護しろ。漆黒の盾を扱えるお前なら、制御出来るだろ」
ソースイが黒剣の柄に手をかける。しかし、黒剣は何の反応も示さず、見ただけでは承諾か拒絶かは分からない。
「ソースイ、行けるか?」
ソースイが黒剣を引き抜と、少しだけ刀身を見つめる。
「勿論です。カショウ様!」
『それじゃあ、私も全力で援護するわよ。後で少しだけ大変になるかもしれないけど、我慢しなさいよ』
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