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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第173話.ゴブリンロード戦④

 ゴブリンロードの体の消滅が始まるが、王冠を掴んだ右手は動いている。黒剣の柄を握る事さえ出来なかった手とは思えない、スムーズな動きで王冠を頭へと載せようとしている。


『大丈夫だったわね』


「王冠は力を貸さなかったみたいだな」


『そうね、与えられたのは破滅の力。それも強力な滅びね』


 王冠がゴブリンロードの消滅を加速させる。王冠を頭に載せれば、ゴブリンロードの存在は完全に消滅してしまうのは間違いない。


 王冠がどのようなものなのかは分からないが、ゴブリンキングの杖が精霊樹の枝であったように何かが隠されているのかもしれない。しかしゴブリンの中でも王となる者の象徴となってきた存在から、消滅を与えられたのなら受け入れるしかないだろう。


『ゴブリンロードとしても本望でしょうね。象徴としてきた存在にに実力不足といわれれば、他の誰をも責める事は出来ないわ』


「聴覚はダメになっても、王冠の声は頭の中に届く。俺達が何もしない方が、ゴブリンロードも諦めがつくだろ。それこそ、ぐうの音も出ない」


 消滅してゆくゴブリンロードを見守る。俺達は何もしない。ゴブリンの間で解決してくれるなら、それが一番イイ気がする。


『カショウ、あれ見て!魔石がおかしいわ』


 ゴブリンロードの胸から青い魔石が剥き出しになるが、所々黒く濁っている。それが体の消滅に合わせて、どんどんと広がり輝き自体も失っている。

 普通ならば、魔物が消滅しても魔石自体が変化をする事はない。体が消滅しても魔石だけは変わらずに残るはず。


「魔石が、何かに乗っ取られているのか?」


『王冠のせいなの?』


「違う、王冠の魔力は魔石に流れていない」


 しかし、目の前の消滅してゆくゴブリンロード以外には俺達しかいない。


 その時、王冠が震える。“魔石を壊せ”と俺の頭の中に呼び掛けてくる。


「魔石を壊せって、随分と偉そうだな。王冠のくせに良く喋る」


『あら、偉そうね。形として残してあげてたんだから、まず感謝の言葉じゃないの?』


 それでも、王冠からは“魔石を壊せ”としか言ってこない。


「ワガママな王冠だな。これが終わったら処分してやる」


 魔物でも、キングやロードクラスの上位種を倒す事は難しい。ウィスプ達の攻撃はゴブリンキングには通用せず、唯一通用したのは俺のマジックソードだけだった。


 しかし、ウィスプ達やブロッサも成長し進化もしている。今の力なら、ゴブリンキングにも通用するかもしれない。

 だが、格の落ちるゴブリンロードといっても戦闘能力はゴブリンキングよりも高い。仮にキングに通用しても、ロードには通用しない可能性もある。


「確実に魔石を破壊するとなれば、やはりマジックソードしかないのか」


『それが一番イイ方法かしら。カショウが魔石を壊せば、何かを吸収するかもしれないのよね。後の援護は任せてちょうだい!』


「そうだね!新しい能力を得るためには、カショウが突撃するしかないね。リッター達も援護するよ」


「ムーアもナレッジも、少し論点がズレてないか?」


『あら、結果は一緒でしょ!』


 ムーアもナレッジも早く俺に突撃させたいのだろうか、ウィスプ達やリッターも準備万端で、俺の突撃待ちの状態をつくってしまう。


「連携は完璧だな」


『どういたしまして♪いつでもどうぞ!』


「ダーク、ナルキ、魔石を壊すぞ!」


 魔石を壊すとなれば、接近して戦うしかない。しかし今のダークが紫紺の刀ではなくマジックソードを持っているのであれば、俺は近付く必要はない。

 ナルキに持たせたマジックソードならば、枝を自由に伸ばす事で離れた所から攻撃出来る。俺が近寄る事なく魔石を壊す方法も頭をよぎるが、今さら期待を裏切る事は出来ない。


 魔石を破壊出来る可能性が高いのは、無属性魔法の力を最大限に発揮出来る俺なのだから。これが最善の方法と、自分に言い聞かせる!


 ゴブリンロードへと駆け寄るが、ウィスプ達が先にサンダーボルトを放つ。本気ではない様子見の加減された攻撃だが、ゴブリンロードは防ぐ素振りを見せる事もなく直撃してしまう。


 他にウィスプ達の攻撃を邪魔をしてくるものも居ないし、周囲に気配も感じない。目の前には消滅を続けるゴブリンロードの体と、残された骨があるのみ。そして、魔石には傷一つ付いていない。


 ダークの操る紫紺の刀が、這いつくばるゴブリンロード一直線に近付き、最短距離で魔石を狙う。

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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