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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第170話.ゴブリンロード戦①

 ゴブリンロードが黒剣を軽く振るう。ぞんざいに振り払った一振だけでも、一瞬で空間が歪む。それが透明な刃となって放たれる。


 ゴブリンロードのスキルなのか、黒剣のスキルなのかは分からないが、オオザの崖の洞窟で見せた透明な刃の斬撃は、簡単に石柱を切り落とした。

 ゴブリンロードはあの短時間で俺達の実力を把握していたのかもしれない。そして俺達を倒すのには、この程度の斬撃で十分といわんばかりで、黒剣はすぐに鞘へと収める。


「バーレッジ」


 相手がゴブリンロードで、斬撃を飛ばす事は分かっている。あらかじめ展開していたマジックシールドに、バーレッジを発動させる準備は出来ている。

 米粒程の大きさにまで小さく分裂させ、そして斬撃の形を真似ると、正面からぶつかり合う。


 バシンッ!


 軽い弾ける音と共に、周囲に風を撒き散らす。しかしその威力は完全に殺されてしまい、髪の毛を揺らす程度の風を起こすと消滅してしまう。

 しかし俺のバーレッジは依然として、その形を残したまま。


「斬撃だけが消えてしまったな」


 ニヤッと笑みを浮かべると、ゴブリンロードが不機嫌な表情を見せる。


「生意気な小僧が!」


 再び、ゴブリンロードが黒剣を振るう。しかし、今度は黒剣は鞘には収まらず抜き放たれたままで、先と比べると警戒している事は伝わってくる。


 バァシーーンッ


 しかし再び斬撃はバーレッジに打ち消される。先よりは少し強い程度の風が吹いただけで、同じ結果の繰り返しとなる。


「また一緒だな。俺のマジックシールドにはかすり傷すら付いていないぞ」


 展開したバーレッジを元のダイヤ型のマジックシールドの戻す。消耗すらしていない事を見せつけると、ゴブリンロードの視線が鋭くなるが言葉は発しない。


「これが本気なのか。こっちが興醒めだな」


 俺がさらに挑発すると、ゴブリンロードは持っていた黒剣の柄を両手で掴む。骨だけとなった左手だが、その動きは自然で違和感は感じさせない。


 その瞬間、俺の背中に純白の翼が現れ、翼を大きく広げて何かをアピールする。

 リズとリタも直接ゴブリンロードの強さを見ているのだから、俺が挑発する事に不安を感じているのだろう。


「大丈夫だ、心配ない」


「お喋りとは余裕だな、小僧!」


 そう言うと、ゴブリンロードは腰を落とす。先の無造作に振るった攻撃とは違い、構えをとり十分なタメをつくる。


「消滅しろ!」


 今までの片手でのぞんざいな攻撃とは違い、両手で放った攻撃。見える斬撃の大きさも、込められた魔力も倍以上に違う。


 しかし、俺は軽く手を振っただけでバーレッジを操作する。


 熱量の籠った攻撃に対して、軽くあしらうような防御。それでも結果は変わらない。


 踏ん張らなければ立っていられないような嵐が巻き起こるが、リズとリタの純白の翼が打ち消してくれる。しかし、それは斬撃自体は無効化された事を意味している。

 そしてバーレッジは残ったままで、再び元のマジックシールドへと戻る。細分化されたバーレッジの1粒を消滅させる事も出来ていない。


 そして風が静まると、純白の翼が抗議の声を上げるように何度か羽ばたきを繰り返す。


「ごめんごめん、次はもっと真面目にやるから怒るなよ」


『そうよ、余裕を見せるのはイイけど、油断しすぎはダメよ』


 そこにムーアも混ざってくるが、混ざってくる事自体が余裕であり油断だと指摘出来るわけはない。



 俺達とは逆に、余裕だったはずのゴブリンロードは顔は驚愕の表情に変わり、そして言葉も出てこない。


 最後の攻撃で、皆がゴブリンロードの異変に気付いたようで、哀れむような顔をしている。


『残念ね。もう終わっていたのね。ソースイもハンソも安心してもイイわよ。もうあのゴブリンロードの姿はないわ』


「何を言っている。お前達ごときに、私が負けるわけがない!」


 そう言うと、ゴブリンロードは再び黒剣を構え直す。


「気付いていないのは本人だけだろ。ミュラー、ゴブリンロードに自分自身の姿を見せてやれ」


 ミュラーの盾が現れ、ゴブリンロードの姿を写し出す。そこには、ゴブリンロードが知っている自分の姿は写されていない。


 溶け出した皮膚は、斬撃とバーレッジの衝突で巻き起こされた風で吹き飛ばされ、所々で人体模型のような姿になっている。


「違う、お前達が作り出した幻だ」


 そう言うと、無事であったはずの右手を見る。


「何故だ、話が違うではないか!」

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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