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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第154話.力と責任

 カマ精霊は、ブロッサの毒により精霊としての力を大きく落とした。しかし力を落としたのは、それだけが原因ではない。

 自分だけが進化により望んだ姿になれなかった事、そしてその姿がもっとも忌み嫌う姿であった事が、哀しみの精霊としての大きな原動力になっていた。


 しかし、その見えていた姿は取り憑いたレイスの仕業であり、その原因が解決した今となっては哀しみの原動力となるものを失っている。


 それを補ってくれるのが”タダノカマセイレ”という名前になるだろう。哀しみの力を失った精霊の哀れみ。


「実用性と効率を考えると、イイ名前じゃないか。俺は悪くないと思うぞ」


「名前は回復するまでの、暫くの間だけなのよね?」


『名前は暫くだけど、そう簡単に外には出られないからね』


「え~何でダメなのよ~!」


『エルフ族を相手に暴れたのは見られてるの?哀しみの精霊でカマ姿のあなたは目立つ存在なのは分かってるでしょ?』


「フードは被っていたし、顔は見られていないわよ。それに後方にいたから、魔力さえも探知されていない自身はあるわ」


 少しでも良い条件を勝ち取ろうとするカマ精霊の前に、腕組みしたブロッサが仁王立ちする。


「力とは何か分かってるノ?行使した力が与える影響を知っているだけじゃダメ。行使した力に応じた責任があるのヨ。責任の取れない力は精霊の力ではないワ。それは、魔物の力と同じヨ!」


「でも、誰だってレイスに取り憑かれてしまえば、どうすることも出来ないわ」


「じゃあ、レイスが逃げ出した後のあなたは、どうだったの?自分が巻き起こした事に責任を取ろうとした?まだ動けるのに、諦めて消滅する事を選んだんじゃないノ」


 カマ精霊は否定できずに黙っている。レイスの仕業であったにしても、自分の望みが叶わずに暴走してしまった事実が変わることはない。


「簡単に諦めて逃げ出すのは、哀しみの精霊のする事じゃナイ。ただのカマ精霊でしかないワ!」


『そうね、ブロッサの言う通り。それに、思い通りにならないと暴走する危険な精霊を、エルフ族が黙って見逃すとは思えないわ。あなたは、それを理解しているの?』


「どうなるにしても、暫くはブレスレットの中でほとぼり冷めるまで待つのが妥当だろうな。直ぐに答えは出ないだろうけど、考える時間は十分にある。」


『カショウは甘いわね。あなたがカショウに力を貸して有益な精霊であることを示さなければ、あなたは今の姿でいられない。何か反対意見はあるかしら?』


「ないわ···」


「それじゃあ、名前はタダノカマセイレで決まりだな」


 そう告げると、目の前のカマ精霊はブレスレットの中へと吸い込まれてしまう。


 契約する精霊が増えることは良い事ではあるが、精霊としての存在が消耗してしまうと回復にはかなりの時間が必要になる。

 リズやリタ、ミュラーも召喚して自由に動けるまでには回復していない。タダノカマセイレと同じ精神精霊のイッショは、やっと豆柴程度の姿を顕在化出来るようになったのだから、元通りと呼べるまでに回復するには年単位の時間が必要になるだろう。



 しかし、今はタダノカマセイレの精霊としての力よりも、洞穴の情報をもたらしたのが大きい。

 洞穴の奥にいるのは、左手と右脚の肉が溶け落ち、骨が剥き出しとなった黒剣を持ったゴブリンである事。それは、オオザの崖のゴブリンキングが復活させようとして失敗したゴブリンロードで間違いない。


 しかし剥き出しの骨が金色に輝き、身体の腐敗は止まっている。タダノカマセイレと同じで、何らかの死霊が関係している可能性が高い。


 そして大量のスケルトン達は、見た目通りゴブリンの骨だった。ゴブリンロードは洞穴の奥でゴブリン達を復活させようとしているが、何故か全て腐敗した状態でポップアップしてくる。最初はゴブリンゾンビのような状態で、時間の経過とともに肉は全て溶け落ちて、最終的にはスケルトン状態になってしまう。


「マズいな。確か、ゴブリンロードが逃げた穴に、ゴブリンの核を大量に投げ込んだよな···」


『ええ、みんなで投げ込んだわよ』


「ここのスケルトンは、俺達が投げ込んだゴブリンの核かもしれない···よな」


『私は魔物の核の臭いなんて感じ取れないから、数までは分からないわよ』


「全部ではなくても、軽く千は超えているだろうな」


 故意ではなくても、やった事に対しての責任は···あるのだろうな。

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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