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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第147話.選抜隊

 爺エルフは注目させないつもりだったが、明かりをもたらしたヒト族を無視する事は出来なかった。


「おおっ、助かった」


「この光は明るいぞ。火の光ではなく、間違いなく日の光だ!」


「これはどうやって維持しているんだ?維持する事が出来るのか?」


「死霊どもの気配が遠ざかって行くぞ」


 そのどれもが、光の玉に希望を見出だし、そして爺エルフは前線のエルフ達の希望という熱量を止めることが出来ない。


 そして、俺がローブの中から次々と光る玉を取り出すと、さらにエルフ族のどよめきが大きくなり、最後には歓声に近い状態となる。

 エルフ達が橋頭堡としている空間には200人くらいのエルフが詰めているが、光の玉は4つもあれば光源としては十分明るい。


 今までは松明の明かりだけで、しかも光の玉1つにも劣る明るさでしかなかった。洞穴の中で継続し橋頭堡を維持する為には、まず食料以上に松明が必要になるが、保管数は多くない。戦闘時以外は、消費を抑える為にほぼ暗闇の中で過ごしていたが、劇的に環境が改善される。


「皆、落ち着け。この場所を橋頭堡として確保しただけだぞ。まだ状況は何1つ変わっていない!」


 浮き足立つエルフ達を指揮官らしきエルフが諫める事で落ち着かせる。少しずつ騒ぎが収まりかけた頃に、さらに大きな声で次の問題を提示する。


「次の問題は、誰が洞穴の奥へと進むかだ。まずは、あのゴブリンを倒さなければなるまい。しかしこの先で洞穴は2つに別れる」


 そこまで話をすると、少しだけ間があく。何を言いたいかは皆が分かっている。それを考える時間をとったに過ぎない。


「選抜隊を募る。選抜隊は2組。我こそはと思う者は名乗りでろ!」


 先ほどの騒ぎと打って変わって完全に静寂に包まれる。そこに爺エルフが、補足するように話し出す。


「残念じゃが、まだまだ人員・物資ともに余裕はない。成功するか、失敗するかも分からない、そんなリスクを犯す事は出来ん。その為の選抜隊じゃ!」


 エルフ達を見渡しゆっくりと噛み締めるように話す。そして、何故か最後には俺達の方を向いて止まる。


「カショウ殿は、どうですかな?そのつもりで、洞穴の中へ来たのではないですか?どんなに物好きでも好奇心だけでは、ここへは来んでしょう」


「俺達を簡単に信用して大丈夫なのか?」


「洞穴の中に入れば、死霊どもは誰彼構わず襲いかかるでしょう。それがエルフ族であろうがヒト族であろうが、迷い人であっても皆一緒でしょう。カショウ殿は姫様が認めたお方。ここで文句を言う者は誰もおりません」


 文句は言わないだけで、思っているんだろうとは聞かない。それに皆一緒と言いたいのだろうが、俺達が選抜隊の1つとなって別行動をとってくれれば、エルフ族の中に迷い人で魔物の翼をもった異分子は混ざらない。

 それに、選抜隊には命の危険が伴うが、ここにいる全てのエルフ族が洞穴の中で全滅する覚悟はないだろう。いざとなればこの森を捨てて逃げ出す選択肢はあるのだろう。


「好奇心とは違うが、ここに現れたゴブリンに関心がある。もしかしたら俺が知っているゴブリンロードなのかもしれない。そうであれば、いずれ俺達の前に姿を現すだろう。そうでなかったら、光の玉を置いてフタガに戻っているよ」


「私はそれで構いません。選抜隊の一組という事で、よろしいですか?この洞穴の中で、光の精霊を維持し続けれるカショウ殿以上に適任の者はおりません」


「ああ、それで構わない。ただ道が2つに別れるなら、どちらに行くかは選ばせて欲しい」


 爺エルフが、指揮官のエルフを見やる。


「残る一組の選抜隊は、私が率います。しかし、左右の分岐のどちらにゴブリンロードいるかは分かりません。私たちはここで防衛するしかなく、分岐より先には行く事が出来ておりません」


「当たろうが外れようが、自分の選択で決めたいだけだから深い意味はない」


「それでしたら、こちらも問題はありません。先にお選び下さい」


 一本道を奥に進むと、洞穴は広がってゆく。道幅も大人5・6人が横に並んで歩ける程に広がり、まだまだ広がりを見せている。

 そして現れた左右に別れる分岐点。どちらの道も大きさや形状などの見た目に違いは見られない。


 ローブの中からコインを取り出し、それを右手の親指で上へと弾く。そして回転しながら宙を舞い落ちてくるコインを左手で掴む。


お読み頂きありがとうございます。初めての小説で、ネット小説大賞一次選考を通過出来ました。

物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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