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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第146話.爺エルフの誤算

 クオカの町の地下に現れた、オオザの崖のゴブリンロード。姿をまだ見ていないが、特徴からして間違いないだろう。


 俺達が関与しなければ今頃はヒケンの森に現れ、その力を誇示していたのかもしれない。

 俺達がゴブリンロードを止めていればという考えは、思い上がりも甚だしいだろう。

 全ての事に対処出来るわけではないし、自分達の実力を過信してはアシスを生き抜いていけない。


 ヒケンのゴブリン、タカオのコボルト、フタガのハーピーと同時多発的に襲いかかり、最後の狙いは精霊樹と最初から仕組まれていた可能性が高い。

 その全てを罠を事前に阻止し、エルフ族や蟲人族にも異変を察知させたのだから、結果としても悪くはない。その時の実力で出来る最大限の事はしていると自分に言い聞かせてみる。


『また険しい顔をしているわね』


 ムーアが眉間にシワを寄せて俺の真似をしてくる。


「そりゃそうなるだろ。少し間違っていたら、俺達がボロボロになっていたんだぞ」


『そうね、ゴブリンロードを止めていれば、エルフ族は大丈夫だったかもしれないと考えてるでしょ。だけどあの時、ゴブリンロードを追いかけなかった判断は正解だったわ。それに今、洞穴に入ると決めたのはエルフ族よ。事前に異変を察知出来て、それ知った上での判断したのだから、私達が口を挟む事は良くないわ』


「それは分かってるつもりだよ」



 そして今、爺エルフに案内されて洞穴の中にいる。流石に族長であるコアピタンスは、洞穴の中までは入ってこない。

 クオカの町の中は比較的に自由に行動出来ているみたいだが、洞穴に入ることまでは爺エルフが許さなかった。


 洞穴の入口までは、爺エルフが俺達を先導したが、ここから先は違うようだ。


「この先は一本道になります」


 そう告げると1歩横へと移動して、俺が入口に入れるように道を開ける。俺達が協力者となった事で、爺エルフの口調は丁寧なものに変わったが、扱い自体は変わっていない。

 コアピタンスは、あくまでも俺達を協力者として扱い、エルフ族は依頼者の立場をとる。しかし爺エルフは、俺達をいかに利用するかしか考えていない。


 洞穴の入口は狭くせいぜい大人が2人並んで歩ける程の幅しかなく、そんな道がしばらく続く。緩やかに道が右へ左へと曲がるので、先を見通すことは出来ない。その為に、リッターを召喚し哨戒を行い、ウィスプ達は死霊達との遭遇に備えて臨戦態勢はとっている。


 洞穴の中で苦しめられるはずの暗闇だが、全く躊躇う素振りを見せずに暗闇の中でリッターを召喚する。さらに、消費する魔力を気にせずに召喚精霊を維持し続ける俺に、爺エルフは呆れた顔をしている。


 しかし呆れた顔をしたいのは俺の方も同じになる。何故か先頭は俺で、その後ろに爺エルフが続き、最後尾にソースイとチェンになるのか?自然と守られるポジションに爺エルフがいる。


 洞穴に潜っているエルフ族が見えてきたところで、爺エルフが前に出てくる。洞穴の幅が急に瘤のように広がり、大きな広間となっている。そこにはパッと見でも百人以上のエルフが詰めているだから、中にはもっと多くのエルフが詰めているのだろう。

 もちろん洞穴に潜っているエルフ達は、俺達の存在すら知らないし、爺エルフが案内人を努める理由も分かる。


「少しお待ちください」


 そう告げると、爺エルフは俺達を広間に入る前で待機させ中へとは入れさせない。エルフ族として見られたくない事はあるのだろうし、異分子である俺達との接触をさせたくないのだろう。


 爺エルフは俺達が渡した光の玉を持って、前線のエルフ達へと届けると共に、エルフの中でも指揮官らしき男のところへと向かっている。


 光の玉は相変わらずの輝きで弱まることない。光の玉は欲しいが、自分達の事は見せたくない。そんな都合が良すぎる爺エルフの行動にも見える。

 それを感じ取ってか、珍しくムーアとガーラはブレスレットの中に戻っている。影の中に入れる事までは、知られたくないのかもしれない。


 しかし爺エルフの思いとは反して、エルフ達の反応は大きく、どよめきが起こる。爺エルフがどんなに画策しようとも、現場で起こっている問題は今をどうやって生き残るかでしかない。


 魔力を必要としない光。

 死霊の力を弱める光。

 光の精霊の召喚を助ける光。


 感じられる死霊の気配は遠ざかり、これなら橋頭堡として確立し維持が出来ると、絶望が期待に変わる。

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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