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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
クオカの洞穴の死霊
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第138話.精霊樹

「急に振られてもな。そもそも精霊樹って何なんだ?ムーアは知ってるのか?」


 精霊樹の杖の性能から想像する事しか出来ない俺に聞かれても、まともな答えを導き出せるわけではない。


『それは・・・、凄い木なのよ。ガーラが詳しく知ってるわ』


「精霊、司る。精霊樹、力」


 知らない事を誤魔化せなかったムーアに、言葉の足らないガーラ。

 後は知ってる可能性のあるのは、ブロッサにナルキだが。


 急に薬草を探し始めたブロッサに、お手上げポーズをするナルキ。


 それを察してディードが説明を始める。


 この世界に原初の精霊が魔力を満たし、最初に出来たのが精霊樹と云われている。樹となっているが、8種全ての属性のを持ち合わせる特殊な存在。

 言葉を発する事はないが意思は持ち合わせ、悪しき者は触れるだけでなく近寄る事さえ出来ない。

 それでも精霊樹を利用しようと近付こうとする者も多く、精霊樹を守る為に精霊やエルフ族が集まり出したのがクオカの町の始まりになる。


 さらに精霊樹を守る為の結界が張られ、それは時の経過と共にエルフを守る結界と呼ばれるようになる。


 これは永き時を生きるエルフ族とクオカの町の精霊しか知らないが事だが、精霊樹が何であるかについては誰も知らない。


 ムーアもガーラも黙って話を聞いている。俺が視線を向けると、あからさまに視線を外す。それは2人とも知らなかった事を肯定している。


『そうね、精霊樹が何かは誰も知らない事なのよね』


 知らない事が当たり前と肯定するムーアだが、ダビデを詰問していた時の力強さは感じられない。


「その話はどこまで信用出来るんだ?永い時間をかけてエルフ族が、ミスリードしてきた事も沢山あるんじゃないか?」


 ニコッと笑い、肯定も否定もしないディード。


「それは、あなたの目で確かめて欲しいわ。私が何を言っても信用してくれないでしょうけど、1つだけ証明出来る事があるわ」


「何だ?」


「あなたは精霊樹の杖の所有者として認められた者である事は、キマイラから聞いているわ。それは、あなたにしか使えないはず。それを証明すれば、少なくとも全てが嘘でない事の証明になるはずよ」


 影から、白く紋様の刻まれた精霊樹の杖を取り出して前にかざす。キマイラからも精霊樹の杖については聞いているから、誰にでも扱えないという話は嘘ではないのだろう。それでも、目の前のディードが信用出来る存在ではない。


「触れるわよ、いいわね」


 そこにディードがゆっくりと近付いてきて、そっと手を伸ばす。俺に警戒させない為なのか、それともディードもどうなるか分かっていないのか、風の精霊らしくないゆっくりとした動きを見せる。


 シルフ特有の手の揺らめきが、徐々に大きくなる。そして乱流の風がディードへと吹き付け、その手は霞んでほぼ見えなくなってしまう。

 ディードから感じる魔力もゴソッと小さくなり、無傷ですむ範囲を越えてしまっている。


「もう分かった、これ以上はダメだ」


 慌てて精霊樹の杖を影の中へと戻す。


「ありがとう、これで分かってもらえたかしら。杖ほどの大きさでも精霊樹は特殊な力を持っているの。あなたと契約している精霊は触れる事が出来るみたいだけど、扱いには気を付けた方がイイわよ」


「ああ、精霊樹については分かったよ。だけど、俺達の仕事はハーピーの対処なんじゃないのか?だから、精霊樹の事は関係ないだろ。そうだろダビデ」


 精霊樹はアシスの真理に関わる存在ではあるかもしれないが、それは魔樹の森で初めて分かった事で、俺達が呼ばれたのは光る玉が関係しているはず。

 そして、急に話を振られたダビデはオドオドしだす。


「はっ、はい、ハーピーの事でやってくるヒト族を連れてくるのが私の役目です。ただ、途中で実力を探るようにとは言われていますが・・・」


「それは違うわ、関係があるの。精霊樹の杖の所有者であるあなたに、迷いの森の結界は働かないのよ」


「・・・」


 俺だけでなく、ムーアやガーラもディードの言っている事が今一理解出来ない。


「あなたは、精霊樹に導かれて必ずクオカの町へ行く。引き返す事なんて絶対にありえないわ。精霊樹の存在が、ダビデの任務を失敗させてしまうのよ!」


『「えっ?」』


「ダビデがいなくてもクオカの町に辿り着ける。仮に一緒に居ても、ダビデが後ろにいれば難癖を付けられて失敗と云われかねない。だから、ダビデに先導をさせてクオカの町に行って欲しいの」

お読み頂きありがとうございます。

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物語はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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