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第111話.エルフ族からの招待状

 フタガの領主といっても、岩峰しかなくハーピーの危険に晒された地域に住もうと思う民はいない。さらには、鉱石などの資源が見つかる可能性も少ない土地の為、これから新しく開発が進む可能性も少ない。


 岩峰以外には残るのは2つの街道。タカオの街とオヤの街へ向かう2本の街道になるが、岩峰全体がハーピーの行動範囲内に入る為、その中で関所を設けたり、隊商や旅人を止めて通行税を取る事も出来ない。


 つまり、誰が領地を治めても得にならない土地だからこそ、バッファにしてもチェンを領主に任命する事が出来た。


「ぼっち領主は“あるじ”というより“ぬし”に近いな」


『仲間が増えても、ぼっちの呪いは強力ね』


「領主でぼっちはハイランクぼっちだな』


「皆いるじゃねーですか?」


『それは、私達に領民になれって言ってるの?』


「なってもイイけど、勿論領主として保護してくれるんだよな。そうじゃなかったら出ていくぞ!」


「責任を取れるなら、イスイの領主としては構わんぞ」


「そっ、そんな、皆酷いでさぁー!」


「ここに滞在する客人くらいが、都合がイイって事だ」


「まあ、無事に新領主が誕生して安心したわい」


 そう言うと、バッファが懐から紙のようなものを取り出す。一度だけ紙を確認すると、それをチェンの前に差し出す。


「新領主の初仕事だ。その手腕に期待するぞ!」


 今までの話では、領主の仕事はハーピーから護る事のみのはず。仕事と言われれば、必然とハーピーが関係してくる事になる。

 差し出された紙を恐る恐るとチェンが受け取ると、それを見る間も与えずにムーアが横から奪い取る。


『あら、面白いわね。これをチェンにやれと言うのかしら?』


「貴殿方なら、問題なかろう。如何かな?」


 その紙は、迷いの森のエルフ族族長のコアピタンスから、イスイの街の領主バッファへと宛てられた手紙になる。


 その手紙では、迷いの森にハーピー達の群れが突如として現れ、それと同じくしてフタガの岩峰からハーピー達の姿が消えた。明らかにイスイから来たハーピーである事は間違いなく、迷いの森へとハーピー達を追い出したのは、どういった了見かと問いただしている。

 さらに、迷いの森ではハーピー達が現れた事により生態系が変わりつつあり、魔物達が活性化している。どう対処するつもりか、至急連絡されたしという内容になる。


「責任を持って、討伐されたし!って感じか?」


『まあ、迷いの森の中に安心して入れるなら、悪い話ではないわね。迷いの森には力のある精霊達も多いでしょうし』


「まあ、どうするかは領主様次第だな」


『そうね、領主様がどう考えて、領主様がどう行動するか、それに私達領民は従うのみですわ』


「もう、姐さんもカショウの旦那も勘弁して下せーっ」


 俺達がチェンを弄り出した反応を見て、バッファは最後に光の玉を取り出す。


「これは、あくまで私的な見解でしかない。領主としての命令でも依頼でもない、ただの独り言と思って欲しい」


 独り言というので、俺も言葉には出さず頷いて返事を返す。


 光の玉がイスイの街に届けられた後、首都トーヤの蟲人族の族長にも送られる。それは蟲人族だけの情報としてではなく、ドワーフ族やエルフ族の族長など全ての族長達にも情報共有されている。

 その中でも光る玉を見たときに、エルフ族の族長の表情が一瞬だけ変わった。普段から喜怒哀楽だけでなく驚きの表情をも見せないエルフ族が、ほんの一瞬だけ表情を変えた。

 エルフは秘密の多い種族でもあり、迷いの森の中がどうなっているかも分からないし、エルフ族以外で迷いの森に入った事のある者は少ない。


 きっとエルフ族にも何かが起こっている。ヒケンの森に、タカオの鉱山、フタガの岩峰と異変が起こって、 迷いの森にだけ何も変化がないとは考えにくい。しかし、何が起こっているかは分からない。


「さて、要件は済んだので、イスイの街に戻らせてもらう。抜け出してきたから、後始末が大変でな」


「最後に確認だけど、迷いの森に惑わされずに入れるのか?」


「大丈夫だ、迷いの森にまで行けばエルフの案内人が来る」


 最後にそれだけ確認すると、バッファはイスイの街へと戻って行く。


 アシスに来た時は、迷いの森に行く選択肢は無かっただけに、この数ヶ月での成長を実感する。精霊も、精霊じゃない仲間達も増えた事が感慨深い。


「次は迷いの森に行くか!」


「カショウの旦那に付いて行きやすーーっ!」

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