閑話12.あるドワーフ族の領主の悲願
魔法の世界であるアシス。
創造されたばかりの頃は、様々な属性が混ざり大きな反応を起こした。それが急激な成長や進化となったが、今はどちらかといえば落ち着いた世界。それでも様々な属性が混ざる事により、ゆっくりとではあるが確実に成長し進化している。
ドワーフ族には野心がある。それは新しい素材を造り出すこと。どんなに腕のある職人や名工が鍛えた武器でも、オリハルコンという素材に勝つことが出来ない。
アシスにおいて武器や防具に求められる事とは何か?
1つ目は、どれだけ魔力を流すか、流しやすいかという魔力伝導。
2つ目は、発現した魔法を維持出来るかという魔力耐性。
魔法に対抗するには魔法しかない。どれだけ効率良く魔力を流し込んで、より強く魔法を発動出来るか。そして、発動した魔法に耐えることが出来るか、その2点だけである。
さらに魔法が進化することで、武器本来の必要とされてきた、切る・突くなどの強さは不要となってきている。
それはドワーフ達は耐えることが出来ない屈辱。
なぜ我らが鍛えた武器の美しさが分からないのだろうか?単に素材の形を整えただけのオリハルコンのどこが美しいのか?
そしてタカオの街の北にある鉱山で、ドワーフ達が探し求めていた物が見つかる。オルキャンの話によれば、鉱山の崩落で偶然に見つかったらしい。
僅かに青く光る鉱石。今までに見たことのない未知の鉱石。この鉱石だけでは武器や防具にはならない。
しかし、この鉱石を少量混ぜ武器を鍛えると、魔力伝導が高まる。しかも鎚を振るい鍛えれば鍛えた分だけ、魔力伝導は高くなる。
優れたドワーフ達の職人を集めれば、オリハルコンの魔力伝導をも超えるだろう。
これはタカオの街でも、ごく一部の者だけで秘匿される。この情報は絶対に外に漏らしてはならない。
そして、この鉱石を使って鍛える為の、技術やノウハウが順調に確立されいく。オリハルコンを超えるのは時間の問題だと思われた。
しかし問題が発生する。一定ラインを超えて鍛えると、魔力耐性が落ちてしまう。数回魔力を流しただけて錆びたように劣化し、劣化が出ない程度に抑えると、オリハルコンを超える事は出来ない。
さらなる可能性を求めて、オルキャンは領主の地位を捨て、鉱山を廃鉱にして中に籠ってしまった。
そして私が、後を継いだ。オルキャンに出来ない、私のやり方でドワーフ族の悲願を達成させてみせる。