閑話10.カショウのシワ
協力してくれる精霊達が増えていく。なぜ精霊達は俺に協力してくれるのだろう。
俺の居た元の世界とアシスでは、価値観が違う。精霊達にも何か求めている事があるのだろうか?
詳しくは思い出せないが、元の世界での記憶では、欲求には5つの種類がある。
1つ目は、食欲や睡眠などの生存欲求。
2つ目は、治安・収入など安全欲求。
3つ目は、良い人間関係をつくりたい、良い組織所属したいなどの集団所属欲求。
4つ目は、名声や他人から認められたいなどの尊厳欲求。
5つ目は、達成感や自分の力を活かしたいなどの成長欲求。
これは欲求の強さの順番でもあるらしい。1つ目は一番弱く、5つ目に行くに従い強くなる。
印象が強くて覚えているが、何故かといえば全く俺には当てはまらないから。もっと詳しく知っていれば、何か価値観が変わったのかもしれない。
俺の記憶に残っているという事は、アシスの理から外れるようなものではないはずだ。
アシスの精霊達はどうなのだろうか?
1つ目の生存欲求。これは睡眠や食事の不用な精霊には関係ない。
2つ目の安全欲求。属性のある精霊達にとって、これは必要不可欠な欲求。
3つ目の集団所属欲求。精霊達は集団で居る事に、価値を見出だすのだろうか?どちらかと言えば、自由気まま。干渉を嫌う精霊の方が多いような気がする。
4つ目の尊厳欲求。俺と契約している精霊達は下位から中位クラスの精霊達。上位クラスになれば尊厳はあるのかもしれないが、中位クラスならどうだろうか?ムーアのように契約を司ったり、特殊な精霊なら尊厳はあるかもしれない。
5つ目の成長欲求。成長を願う精霊は多い。だけどそれは成長してゆく過程・結果としての、ありたい姿でしかない。進んで自らの力を活かそうとはしない。
そう考えると精霊達は、安全を求めている事になる。俺と一緒に居ると、安全が保証されるのか?保証してやる事が出来るのか?
レアであるというだけの無属性。王道やチートとはかけ離れたハズレスキルに価値があるのだろうか?
答えは出ない。俺は、精霊達の欲求に応えることが出来るのだろうか?
眠らなくても大丈夫な身体になったせいか、考え出すと延々と思考がループしてしまう。
『カショウ、またシワが出来てる!』
ムーアが自分の眉間を指差して、俺の顔を指摘する。
『また、難しい顔してるわよ。たまには、自分の気持ちにも素直になりなさい!』
そして、そっとクオン特性のお茶を差し出してくれる。