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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
フタガの岩峰のハーピー
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第105話.ハーピークイーン戦①

 ハーピーロードの黒い魔石は砕け散り、その一部は俺へと降りかかり、そして吸収される。


『何があったの?』


「少しだけど、ハーピーロードの記憶を見たよ。ハーピー達が暮らす平和な世界と、そこに訪れた破滅」


『それで、どうなったの?』


「見えたのは、そこまで。ハーピークイーンがハーピー達を喰らい、記憶はそこで終わったよ。本当かどうか、それは分からない」


 沈黙が流れる。俺がアシスに転移して聞いた話や、ムーア達が経験してきた事とは明らかに違う光景。本当なのか嘘なのか、それとも夢を見ているような妄想の世界なのか、それを確かめる術はない。


「記憶の中のクイーンは、綺麗な姿だった。そして、いつも笑っている顔は今の姿からは想像出来ない。そしてハーピーロードは、今のハーピー達を終わらせたいんだ」


 憎むべき相手かと思っていたが、そうではないかもしれない。しかし、魔物が様々な精霊や種族を襲い殺戮をしてきたのも間違いなく事実になる。


『カショウ、どうするの?』


 ムーアが不安そうに聞いてくる。今まで信じていた価値観が大きく変わり、もしかすると積み上げてきたものが、一瞬で崩れてしまうかもしれない。


「ハーピークイーンを、ハーピー達を、終わりにしてやろう!それが、ハーピーロードが俺達に託した最後の願いだよ」


『そうね、私達よね。私達、私達が見届けてあげるわ』


 それ以上は何も言わないムーア。もしかしたら、今まで見てきたものは嘘で、隠された真実があるのかもしれない。だけど、今は目の前にあるものを見る事しか出来ない。それが、どんな結果であるとしても、俺達の関係は変わらない。



 ハーピークイーンの岩峰を最短距離で目指す。霧の立ち込めるエリアを抜け、俺達の姿を隠すものは何も無く、丸見えの状態になっている。

 しかし、岩峰から襲いかかってくるハーピー達はおらず、それどころか見張りのハーピーすら見えない。なんの抵抗もなく、岩峰の麓まで辿り着く。

 ハーピーロードが倒された事の影響なのか、それとも罠なのかは分からないが、迷うことなく頂上を目指して飛ぶ。


 どうしても付いてきたかったソースイは、チェンがソースイ抱え、ソースイがホーソンを抱える形で飛んでいる。

 終盤に差し掛かり、ゼロ・グラビティで残り少ない魔力を消費してでも付いてきたかったみたいだ。


 そして、岩峰の頂上に辿り着くと、フラッシュバックしたハーピーロードの記憶が甦る。頂上には魔石の山が出来上がり、その中央に座するのはハーピークイーン。

 周りのハーピー達を喰らい尽くし、全て己の糧にする。周りのハーピー達も、いざという時は全てを差し出す事が分かっている。

 横暴な存在のように見えたが、実はハーピー達の結束や繋がりは強い。


 俺達の姿を見て、ハーピークイーンが獰猛な笑みを浮かべる。


「来ることが分かっていて、待ち構えていたわけか」


「キエエエエーーーッ」


 叫び声とともに、ハーピークイーンが動き出す。太った身体がではあるが地面を蹴る力は強く、その動きは速い。

 一瞬で距離を詰めてきて、喰らいついてくる。それなりに準備はしていたつもりではあったが、初撃は躱すのがやっと。

 今度は場所を入れ換えて、俺が魔石の山の中になる。足場が悪く無理してハーピークイーンに付き合う必要はなく、飛んで空からの対処を考える。

 普通ならここで現れる純白の翼だが、現れたのは真っ黒な翼。そして、無数ある魔石からの魔力を吸収し始める。


「この翼は!」


『あなたが吸収したのは、ハーピーロードの記憶だけじゃないって事よね』


 ハーピークイーンの顔から獰猛な笑みが消え、悲しそうな表情に変わる。それでも俺へと突進してくる事は変わらない。


 突進に合わせて、黒い翼からは剣羽根が放たれる。周囲の無数の魔石から魔力を吸収し、その攻撃は俺に放ったものと比べても熾烈。


 ハーピークイーンの身体が削られ、それに合わせて突進するスピードは遅くなる。それでも前に進む事は止めないハーピークイーン。


 一歩、また一歩と前に進みてを伸ばせば届く距離まで近付く頃には、肥大化した半分以下にまで削られている。

 そして、やっと見えてきたハーピークイーンの本当の姿と、ハーピーロードの記憶の中の面影が重なる。


「欲しいなら、喰わせてやるよ」

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