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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
フタガの岩峰のハーピー
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第101話.ハーピーロード戦①

“ロード、動く”


 クオンが、ハーピーロードの動き出したのを察知する。岩峰の周りを大きく旋回していたが、その距離が少しずつ短くなり近付いてくる。黒い身体に輝く赤い眼が、何かを探している。


「みんな、隠れろ!」


 空組のう達やダーク、チェンも霧の中へ潜り姿を隠すが、ハーピーロードの旋回は止まらない。


 キエェェッーーー


 ハーピーロードの鳴き声で、岩肌に掴まっていたハーピーメイジが動き出し、一斉に岩を落とし始める。岩峰の周りに岩を落としていたが、少し離れた場所を狙って全てを埋めてしまえと言わんばかりの、なりふり構わずの攻撃を始める。


 ハーピーロードは、俺が精霊使いである事は分かっている。そして精霊達の行動範囲は限られ、その中心にいるのが召喚者になる。精霊達の動きを見て、攻撃する範囲を変えてきたロードは今までの鳥頭のハーピーではない。


 そしてロードが狙っているのは精霊ではなく、生身の身体を持つソースイやホーソンにチェン。そして狙われた先にいるのは、ソースイとハンソ。その中でも身体が大きく俊敏さが1番劣るソースイに狙い定めてきた。


「マズイな、フォリー!」


 ゴブリンキングの杖を取り出し、魔力を込める。クオンがハーピーロードの位置を教え、フォリーがシェイドで地上へ続く穴を開ける。それと同時に、ハーピーロードを狙って魔法を放つ。


「ウィンドトルネード」


 ハーピーロードへと放たれる魔法だが、ハーピーメイジがばら蒔いた岩とメイジ自身が巻き込まれる事で、大きく威力を弱めてしまう。

 そしてハーピーロードに届いたのは強い風が吹き付けた程度で、避ける事もせずに受け止められてしまう。

 翼を大きく広げて風を受け止める事で、自然と俺の方向を向き、見付けたとニヤリと笑みを浮かべる。

 大きく広げた翼から剣羽根を飛ばす。途中にいるハーピーメイジを気にも止めず、巻き添えにして襲いかかってくる剣羽根を、マジックシールドを翳して受け止める。

 小さな羽根だが、その衝撃は強くて重い。押されるマジックシールドをミュラーの盾が展開する事で、押し止める。


 俺が攻撃を受けた事で、う達やブロッサ、ホーソンが慌ててロードに攻撃するが、ハーピーメイジ達が壁となり立ち塞がる。最後のハーピーメイジが消滅したところで、ハーピーロードの攻撃は止む。


 ウィンドトルネードを放ったせいで、霧が吹き飛び俺の姿は丸見えになっているが、ハーピーロードの姿もはっきりと見える。

 近くで見ると、胸のふくらみは無く顔つきや体格は男っぽい。


 ハーピーロードの背後にまわったダークが攻撃を仕掛けようとしたところで、ロードは再び岩峰の周りを大きく旋回し始める。


 シナジーや霧の精霊達が、再び霧の壁を作り出し、俺の姿は濃い霧の中へと消える。


「ムーア、ハーピーに男っているのか?」


『そんな話、聞いたことないわよ』


「ナレッジ、知ってるか?」


「僕も初めて見たよ」


 アシスが誕生した時からの古い精霊でも知らない事実。ハーピーには男もいるのか?もしかして、両性具有?


『精霊の進化は姿を変える事があるわ。セイレーンは進化で姿を変えるでしょ』


「魔物も進化するのか?それとも、変異種に近いのか?」


 普通のロードでは無い事は分かるが、だからといって特別に対抗する術が分かるわけではない。



 “ロード、来る”


 クオンがロードの話から、俺達を現実へと引き戻す。


 脱線した会話をしている間にもブロッサがポイズンボムを放って、ロードの行動範囲を制限している。しかし、岩峰の周りには複雑な気流が発生し、長くは滞留してくれない。


 う達3人は、廃坑で放ったサンダーストームの準備を始め、ソースイは漆黒の盾を掲げ俺の方に向かってくる。ゴブリンロードの持っていた漆黒の盾のゼロ・グラビティなら、ハーピーロードの剣羽根を防ぐ事は可能かもしれない。


 そして、チェンはホーソンを抱えて岩峰の麓を飛んでいる。ナレッジの誘導で、常にロードと対角になり隠れる位置を取っている。もちろん隙があれば、背後から狙うつもりでホーソンは弓を手にしている。 


 最後に純白の翼が現れ、俺に準備万端である事をアピールしようとする。


「準備万端よっ」


 そこにベルの声がして、最後の美味しい所を持って行く。心なしか翼にいつもの元気がない気がするので、軽く触ってやると大きく翼を広げる。


「今度は、こっちから行くぞ!」

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