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精霊のジレンマ~古の記憶と世界の理~  作者: 三河三可
フタガの岩峰のハーピー
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第92話.ハーピークイーン

“馬車の後ろ、危険”


 クオンが何かの存在に気付く。しかも“危険”という言葉を出して、知らせてくるのは珍しい。


「ソースイ、馬車の方に備えろ!」


 俺の言葉で、スリングから斧に持ちかえる事で応じる。


 そして、そのハーピー達の異常性の原因が分かる。地上へと落ちたハーピーに何かが飛び付くと、ハーピーの上半身が一瞬で消えて無くなる。倒された馬車の陰から飛び出したのは、身体は黄色く頭が黒いプリンのような物体。


「あれって、もしかしてハーピー?」


 良く見ると、丸い物体に鳥の翼のようなものが付いている。腕はなく鳥のような翼があり、そして飛び付いた時に見えたのは、間違いなく鳥の趾。

 敵見方の区別なく食い付くが、肥大した体に比べて翼は小さく、翼の中にある鉤爪は食べる事に役には立たない。頭から獲物に突っ込み、頭は血に染まり赤黒くなっている。食べるその姿はとても汚く、そしておぞましい。


『上位種は間違いわね。ロードかしら?』


 ケモミミエルフのシナジーが現れる。その声は少し震えている。


「ロードは全身が黒いハーピーで、岩峰でも数回は目撃されているわ」


「それじゃあ、あのハーピーは・・・」


『まさか、ハーピークイーン?』


「たぶん、そうなるかしら」


 俺達が会話する間も、ハーピークイーンは落ちてくるハーピーを襲い続ける。敵や味方は関係なく、ただ喰らう事だけに執着をみせている。そしてハーピー達の異常とも思える行動は、自分達より美味しいエサを提供するための命懸けの行動。


 ここでハーピークイーンを倒す事が出来れば、全てが解決出来るかもしれない。不気味で未知の存在ではあるけど、千載一遇のチャンスでもある。


 ハーピージェネラルは、蟲人族を狙って動きを見せない。ウィスプ達に襲いきってきたハーピー達も、俺抜きの戦力で十分に戦えている。


 ゴブリンキングの杖に魔力を流し、杖に風を纏わせる。


「ウィンドトルネード」


 まだハーピークイーンは食べることに夢中で気付かない。ハーピークイーンを狙って、今の俺が出来る最大威力の魔法を放つ。

 全く反応を見せないハーピークイーンだったが、もう少しで魔法が届くといったところで振り向く。そして獰猛な笑みを浮かべて、大きな口を開ける。


「ゴオオオォォォーーーーッ」


 ウィンドトルネードが、ハーピークイーンの口に吸い込まれる。


『吸い込んでるの、魔法を?』


「風魔法が、魔力に還元されているのかしら?」


『ハーピーが魔力を吸収するなんて、聞いた事がないわよ!』


 ムーアもシナジーも知らないハーピークイーンの生態に少し困惑している。それとも、このハーピークイーンが特殊な個体なのかもしれない。

 顔色一つ変えずにウィンドトルネードを飲み込み続け、まだまだ余裕はありそうで目元は笑っている。


「ブロッサ、ポイズンボムを頼む」


「任セテ」


 ブロッサがウィンドトルネードに、ポイズンボムを合わせる。ポイズンボムがウィンドトルネードに巻き込まれ、黒い竜巻となりハーピークイーンに目掛けて進む。


「これでも魔力吸収できるかな?」


 ハーピークイーンが魔法を吸い込む為に、ウィンドトルネードは速く進む。その流れに乗りブロッサの放った毒は速く進み、クイーンがその変化に気付いた時は手遅れで、もう吸い込むしかない。


「ゴフゥッ、ゴフゥッ」


 突如現れた毒魔法に、ハーピークイーンの魔力吸収が遅れる。魔力吸収の流れが乱れ、噎せたようになり、風魔法や毒魔法が体内へと流れ込む。さらに魔力吸収が遅れ、ウィンドトルネードがハーピークイーンを後ろへと押し始める。半歩が1歩、2歩と押し込み、そして大きな身体を弾き飛ばす。


 大きく宙へと舞い上がったハーピークイーンをジェネラルの3体が掴まえに行く。

 一番近くにのジェネラルがクイーンの背中を掴むが、重すぎて飛ぶことが出来ない。落ちる速度は遅くなったが、それでも落下は続く。残りのジェネラル2体が左右の翼を掴む事で、やっと落下が止まる。


「オエッ、オエーッ」


 えずきが止まらず、空からキラキラを撒き散らすハーピークイーン。蟲人族を襲っていたハーピー達の標的が、俺達に一斉に切り替わる。ジェネラルはクイーンを持ったまま離れて行くから、タカオの街の襲撃と同様で逃走するのだろう。

 キラキラ爆弾を撒き散らしながら、どんどんと姿が小さくなる。

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