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紫陽花  作者: 七星瓢虫
3/8

[男]

(やが)て砂嵐のような雨音に雑じり、どこともなく怒声が響く

隣接して、複数設けられる取調室は防音が十分とはいえない

勿論、意図的にだ

筒抜けの声が、物音が、取り調べ対象者を否応なしに窮追するのだ


だが、この男は違う


古手刑事は、自分の肩越しに取り調べ対象者である男を盗み見る

事務机を挟んで若手刑事と向かい合い座る、この男は恬として静かだ


古手刑事は、現場にいの一番に駆け付けた警察官の言葉を思い出す


男は、抵抗もせず確保された

通報を受け現場に到着した警察官は初め、容疑者を確認出来なかった


遠巻きにあがる、悲鳴の中

この男は屈み込み、女学生を抱き抱えていた

その様子は介抱しているようにも、それを諦観しているようにも見えた


「それ」

「それ」ってなんだ


聞き返す古手刑事に警察官は、小さく答える


『死、です』


男は死にゆく女学生の顔を、忘我の表情で眺めていた

そして、今も

取調室のパイプ椅子に腰掛けながら、男は同じ表情を浮かべている


うっとりしている

心を奪われている、女学生に


呆れる

歳を考えろ

見て呉れを考えろ


無骨な小男だ

熊のようにのっそり歩く、才のない小男だ

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