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プロローグ

「カルラ、明日は二人で出掛けないか」

「遠慮します」


 どうして十日間限定の被験者と観察者の関係で外出しなければいけないのか。誰かに見られて困るのはこちらなのに。


「遠慮などしなくていい。美味しい焼菓子の店に行くだけだ」


 人の好物をちらつかせるとは流石長官。なかなかの戦略だ。しかしそれがいくら高級焼菓子だったとしても、誰かに見られる危険と釣り合うとは思えない。


「それならそのお店だけ教えて下さい。友人と行きます」


 長官は日に日に甘い雰囲気を纏ってきた気がするのよね。長官が作った惚れ薬なのだから効果が抜群なのは納得出来る。だけどこれは本当に十日間も観察する必要ある? もう十分効果が出ていると思う。惚れ薬のせいだって頭ではわかっているけれど、心が持っていかれそうで怖い。


「私と出歩くのは嫌か」


 明らかに寂しそうな顔をしないで。端正な顔立ちだから卑怯だ。私が悪いみたいな気分になる。これは絶対に長官が悪いのに、服薬中の長官に文句を言った所で通じないのが悔しい。


「もう少し先ではいけませんか? 一ヶ月後なら考えます」


 とりあえず予定を先延ばしにしよう。契約期間以降なら約束は無効になるはずだ。多分私が責められる事はない。


「一ヶ月は遠すぎる。焼菓子を食べるだけなら時間もかからないではないか」


 どうしてこんなに意固地なの。それは薬の効果が切れた後に、他の人と行ってよ。あぁ、もう。どうして私はこの実験の観察役を引き受けたんだろう。あの時の自分に言いたい。高額報酬なんかに釣られないで、と。


 時を戻す魔法はないから、もうどうにもならないけれど。

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