桜の下で
信号が赤から青に変わり、一斉に人が歩き出す。人が多い東京の街はどこにいても暑苦しい
そんな光景を男は歩道橋の上から眺めていた。
歩道橋の上も人混みに溢れていた。
ふぅと深い溜息をついて通勤の人に逆らうように歩いた。
その時、見知らぬ人の手が触れた。
頭が真っ白になり、イメージが流れ込む。
怒鳴ってくる上司、帰っても一人暮らしな為暗い部屋。暖かな実家。
心の叫び(愛されたい……苦しい…死にたい…)
「……。」
何故人は愛されたいと願うのだろう。
愛されない人間など存在しないというのに。
さて、実家のある田舎へ行くとするか。
あの誰も知らない大きな桜の木がある所へ。
「暇だぁ!」
布団の中でごろごろしていた私だったが、元々活発な私が1時間も同じ場所で寝転がってれるわけがなく、外をふらつくことにした。
坂道だ!走れ!!!
空が高い10月の秋空。
心地いい風が私の頬を撫でた。
見知る顔を見つけたので足を止めた
「やぁおじいさん!」
いつも畑を耕しているおじいさんだ
真っ黒に日焼けしていて白髪と髭がよく目立つ。
「今日も元気だね。」
朗らかな笑顔を私に向ける。私は満面の笑みで手を振った。
そして全速力で坂道を駆け下りた
こんな田舎では知らない顔の人間なんて殆どいない。
坂を駆け下りた先、茂みを潜り抜ける。
そうすると、誰も知らない草原がある
……。
桜。青くて白くてピンクの桜。
「今日も綺麗だな。」
大きな幹に私は手を添えた。
そのまま眠りに落ちた。
どうやら、この場所は僕だけの場所ではなくなったようだ。先客がいた。
眠っていた。寝息を立てている
外国の子かな。
ふわっとした長く白い髪の毛。白い肌。細い手足が青いワンピースから覗いていた
「相変わらず綺麗な桜だな。秋だと言うのに」
そう、ここの桜は何故か一年中咲いている。
「お兄さん…誰?」
目が覚めたのか。あからさまに敵意を向けた目だった。翡翠色の目は日本人とは思えなかった
「さぁ、誰だろうね。」
「……。」
目の前の少女が僕に手を伸ばしてきた。
「触るな」
咄嗟に後ろに身を引いた。何故かこの子には絶対触れては行けない気がした。幼い少女の過去などしれているのに。
「あ、ごめんなさい。」
「構わない」
「何をしているの?」
「桜を見てる」
「……。なのに寂しそうな目をするのね」
目が覚めたら目の前に知らぬ人間がいた。
しかもこの場所は地元の人でも知らない場所なのに…。見上げる位置にある男の顔は泣いているようにも見えた。
「ねぇ、お兄さん。」
「……。」
無視……か。
「また明日もお話しない?」
目が覚めた少女は昨日と同じように坂道を走り抜けた。下り道はたくさんの分かれ道があって、まるで迷路のようだった。
一番下まで下り切って左に行けば港。右に行けばここの神様が祀られている神社がある。
えぇと、桜までの道はここを曲がって……
口約束だけど、来るのかな……。
あの後、明日も来るから構わないよ。と一言だけ告げて帰って行った背中を眺めていた。
人口が500人程度のこの島じゃ学校だなんてひとつしかないし一学年1クラスだった。
私は学校にも行かず毎日遊び呆けていたが。
「いた!!」
私よりも早く来ていた彼は桜を眺めていた。
片手に本を持っていた。
「何その本!!見せて!」
無愛想な彼は私に本を投げ渡した。
「うわっ!危ないよ!?」
なんとかキャッチしたけど、私の顔に当たったらどうしてくれるのさ。
えぇと何何?難しー!
「こんな難しい本読んで楽しいの??絵本の方が良くない??」
「うるさい餓鬼だな。返せ」
はぁ、折角リフレッシュする為にここに来たというのにうるさいガキが僕に付きまとう。
幼い少女に当たりが強いのはイライラしているせいに違いない。
「学校とか行かなくていいのか?」
僕から話しかけられたのが嬉しかったのだろう、尻尾を降るように目をキラキラ輝かせていた
「サボってる!!」
「行けよ……」
……?尻尾……??確かに目の前の少女には白くてふわふわした尻尾……が、耳が……。
目を丸くした
「お前、妖狐か……。」
「……あ。」
しまった、油断していた。耳と尻尾をすぅっと引っ込めた
「な、なんのこと?」
「いや、今隠しても……」
呆れたような目の前の彼は気持ち悪がったりしないようだ。
「怖くないの?」
「別に。生きてたら色々あるんだなーって思うレベル」
「そっか!」
私は白狐である!
この島の神様なのだ!!
崇めろ!
そう叫んだ神とやらは幼い少女で中身は年寄りか
目の前の無愛想な彼に少し暇つぶし相手をしてもらおうか!
また連載小説を……
前のやつをかかなければなりませんねっ、