意図
諸角は相沢の意図するところを理解できずにいた。
「ルールといってもどうすれば…」
速水が口を挟む。
「とにかく全員でどんなルールが作ることができそうかを挙げていったらどうかな?賛成するかどうかは後回しにして」
おそらく、ここに集まったメンバーはほとんどが会話を交わしたことがない者同士であり、警戒心や緊張感もあってか、話し合いもスムーズに進んだとはお世辞にも言えなかった。ただ、速水の言う通りに例を挙げていくに連れて、場の雰囲気も和みつつあった。
「そういえば、監督が『練習の自由参加制を取り入れて欲しい』って言ってたけど。みんなはどう思う?」
一番前の席に座っていた細身の選手が「俺はどっちでもいい」と冷静に言った。まだ高校一年生の輪の中にあって、その落ち着きぶりは誰から見ても感じ取ることができた。
諸角は手元のノートに目をやる。
「確か島崎君だっけ?」
島崎は「ああ」と頷いて続ける。
「今の監督の意見だけど、別に自由だろうが強制だろうが、俺はどっちみち毎日練習するんで、別にどっちでもいい」
速水もそれに続く。
「俺も別にどっちでも。島崎とおんなじでどっちみち練習はするから」
島崎と速水は中学時代に同じ地区で何度も対戦していたこともあり、以前からの知り合いのようだった。
島崎と速水の意見もあり、相沢の意見は全員の選手たちの賛同を得られた。ただ諸角はどうにも分からなかった。このルールと相沢の考えが。