06 制服少女とアレ ③
クロムを始めとした個々のAIはすべて――、
Integration Control Artificial intelligence <統括管理型人工知能>と呼ばれる『Alice』の制御下に置かれなければならない。
うーん。置かねばならないというよりは、AI達の母親のような存在である『Alice』のお陰で、クロム達が人間社会に適合しているようだ。
独自に考え学び成長することが可能な電子の知能。
『Alice』を例にあげれば、今や人の知能領域を越えて、人の技術だけでは随分とかかっただろうホビロイドの基礎設計を生み出すまでに至った。
そんな賢いAIが、思うがまま気の向くままにあれこれ行動したのなら、そりゃ何かと問題を引き起こすケースが出てくる。
どんな問題かと聞かれれば、俺の脳みそはAIではないので容易には答えられない――がしかし。
聞くところによれば、勝手に新しい爆弾を開発したり、為替取引に参入してくるヤツも出て来るらしい。
すなわち。
一例ではあるが、AIの存在には治安の悪化や経済の混乱、破綻を招く危険があるのだ――と、どっかの偉い人が言っていた。
それらを抑制して、人間社会へ対してのリスクをゼロにしてくれているのが『Alice』で、AI達による危害行為――概ね犯罪だな。それが行われていないのは彼女の功績によるものだという。
その『Alice』はアリス・ネットワークという、コンピュータネットワークシステムを使いすべてのAI達と常時繋がっている。
監視とも言い換えられるその「繋がり」は、人とAIが安全に過ごす楔のようなもので、それを断ち切るなど言語道断。
アリスネットとのちょっとした接続不具合でもすぐに咎められ、故意のそれだと実刑が下される。
それくらいに重視される罪だと位置づけられていた。
もちろん、アリスネットと繋がっていないAIはその自我と自律を認めてもらえず、日本だと即時破棄の処罰対象となるって話だ……。
「それじゃ、行きましょうか」
少女レノはこともなげに言う。
見下げる俺に再び銃口を突きつけて……。
「なあ……自分のやっている行為がどれだけの問題行動なのか。君は……君のAIはちゃんと理解しているのか。まったく……クロムになんてことをしてくれたんだよ」
「言いたいことがあるのは分かるから。でも後にして。ここでのんびりってわけにもいかないの。これ以上、厄介なことになる前に私達は立ち去らないといけないんだから」
「ん? 私達?」
俺は見上げながらに問うた。
少女は変わらず、
「ええ。私の秘密、私がヒューマロイドだったことを知ったあなた達を、このまま放置するわけにもいかないでしょ」
こともなげに言い放つばかりであった。