04 制服少女とアレ ①
目の前には、自分の左腕を自分の右手で持つ半裸の少女。
すなわち、半裸の少女の左腕には肘から下がない状態。
「……むが……そんなあ……ロボ子だった。そんなあ……俺は……ロボ子に恋をしていたのか……」
絞る出すようにして、事実をごもごも吐いた。
へたり込みそうな足腰で、なんだか泣けてくる自分を必至に支えた。
義肢の可能性も過ぎった。
けど、逃避だ。幻想だ。そればかりか少女すべてが作り物だろう。
完璧すぎる少女のプロポーションと半裸を見られても悲鳴一つ上げない乙女の態度に、俺は直感的に理解していた。
そんなロボ子の少女が、唐突の失恋模様な俺の心をよそに、傍らに置いてあったリュックをゴソゴソ。
そして。
ハズしていた本来の左腕の代わりに、黒光りするぶっとい筒状形態の腕をつけていた。
少女は銃口らしき穴のあるその左腕で俺を威嚇する。
「ままままさかそれって――まさかのサイコガン!?」
「よくお店に来ていた人ね。それで、どこの所属。日本政府、それとも葵財団独自の……。まさかUSAの諜報局……ってことはなさそうね」
俺を常連だと思っていてくれたことは嬉しいような――だが、どこの所属で? アメリカで? その腕の物は!?
「答えてっ」
キツく言われて、びくっと肩を震わせた俺。
鬼気迫るような真剣な少女に、情けなくも圧倒されてしまった。
しかしだからといって、答えるも何も――何がなんだか。
「俺は、ええと、無所属です。その、面接にうかがいまして、いや誠に勝手ながらですけれども、その、ドアが閉まらなくて、いや勝手に開けてしまったのですが、だから――ここが更衣室だとは存じ上げなくて、いやほんとに。その、申し上げございませんでした」
「そう。質問に対しての表情や声の感じからだと、虚偽の反応はみられないみたいね」
敬うこともどうだろうな相手に対し、なぜか敬語口調になってしまったのもよくわからんが、わからんなりにどうやら試されていたらしいことは理解する。
そしてどうやら、嘘はついていないと判断された――みたい。
その事で、少しばかり安堵感が生まれた。
けどそう感じたのも束の間、俺の視界は暗転する。
覚えているのは一瞬で全身を覆った強烈な刺激。
雷にでも打たれたかのようなそれであり、サイコガンで撃たれたのだとわかるそれだった。
あと――。
「私が迂闊だった。そしてあなたも迂闊だった。それで諦めてちょうだい」
こんな台詞が耳をかすめた。
鈴を転がすような声でもあった少女の冷徹な声音による手向け。
俺の意識は永遠に続く深い闇のようなまどろみへと落ちるのだった……。