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夕日の国のファンタジア  作者: 生田英作
第1部

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16/358

[16]


 竜伸は、黙って女将さんの顔を見つめた。


 否、黙って、とういうのは正確ではない――――あまりの事に声も出なかったのだ。


(黄泉の国……)


 口の中で、たった今耳朶を震わせたその言葉を反芻する。

 それは、日本神話――古事記に記された言葉。

 生ける者が足を踏み入れてはいけない地の事。

 死したる者の国、命無き者達のみが存在を許された世界。

 それが、古事記の語る『黄泉の国』だった。

 そして――――。

 そこに、その世界に竜伸はいるのだと目の前の人は言っている。

 冗談――――。

 には、とても思えない。

 女将さんの表情は、真剣そのものだ。

 それに、この店に来る前に見た光景が明らかに異様だった。


『懐かしい街並み』


『レトロなデザインの路面電車や自動車』


『古めかしい服装の人々』


 つい、さっき目にした物達が走馬灯のように脳裏を駆け廻る。


 ――そう、あれは幻などでは断じてない。


 これはまぎれもない事実なのだ。


『現実』なのだ。


 ――――信じられないような体験の行きついた先がこれだと言うのか?

 背中を冷たい汗が伝う。

 つまり、ここは……。

 そして、俺は…………。

 ………………。 

 走馬灯のように家族の顔が目に浮かんだ。

 父さん、母さん、ばあちゃん。

 そして、双子の姉のあおい。

 もう、二度と逢えないのだろうか。

 膨れ上がる不安を何とかこらえて竜伸は言葉を紡ぐ。

 もう、『僕』などとは、言っていられそうもない。



「俺は……死んだんですか?」


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