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「さぁて……」
と、食事がひと段落したところで女将さんが口を開いた。
「事の顛末は、おまえさんが気を失っている間にかさねから聞いたよ。まずは、改めて礼を言わせてほしい。かさねを助けてくれてありがとう。恩に着るよ」
女将さんが深々と頭を下げた。女将さんの改まった態度に竜伸が慌てていると、かさねと残りの二人の少女、そして、女将さんの隣に座っていたイガグリ頭のこの店のコックと思しき初老の男性も揃って頭を下げる。
恐縮しきりの竜伸をよそに女将さんは話を続けた。
「本当におまえさんがいなかったらどうなっていた事か。それにしても祟り神相手にたいしたもんさ。祟り神の恐ろしさを知らなくたって、あいつらは、たいてい猛獣の姿だからね。並みの男ならブルっちまうよ。でも、そこで助けに入るんだから、たいした玉さね。あたしがもう少し若かったらほっとかないんだけどね。男はやっぱり――」
くすくすと忍び笑いを漏らす皆を尻目にかさねが女将さんの袖をそっと引く。
ぽかんとしている竜伸の顔に気が付くと女将さんはクスリと笑った。
「いけない、いけない。つい、夢中になっちまったね。悪い癖だよ。かさね、何をどこまで話したんだい?」
「まだ、ほとんど……。女将さん、私から――」
と、深刻な表情を浮かべるかさねを手で制して、女将さんは「まかせておきな」とばかりに頷いてみせた。
「で、何から話そうかね……。そうだ、まだちゃんとした自己紹介をしていなかったね。あたしの名は、さくや。この店の女将をやりながら『日女の乙女』の元締めもやってるよ。で、この人――」
と言って隣に座っていたイガグリ頭を手で示す。
「――が料理を担当してくれてる藤丸さん。かさねの事は、もう知ってるね。で、おまえさんの隣の子が――」
竜伸の左隣に座っていた例のリボンのふんわり少女がにっこりと微笑んだ。
かさねの澄んだ美しさとはまた違うほんわかとした美しさが全体ににじみ出ている少女だった。
「――やよい。そして、その隣の子がみくもちゃん。二人ともかさねと同じ『日女の乙女』だよ。もっとも、みくもちゃんはその卵といった所かね。それと、仕事の都合で今ここにはいないけどあと二人、ゆきのといつきという子がうちにはいるよ」
最後に紹介されたおかっぱ頭の女の子はぺこりとかわいらしい頭を下げた。一通り皆の紹介が終わって今度は竜伸の番だ。
額に汗を掻きつつ、かさねにしたのと同じ自己紹介をすると皆が拍手してくれた。
なおも口を開きかけた竜伸に向かって、やよいが勢いよく手を挙げる。
「はぁ~い、はいは~い! 竜伸さんは、おいくつですかぁ?」
「十六歳です」
「かさねちゃんと一緒……。あ、ちなみに私は十八歳。年上だよぅ。かさねちゃん達のお姉ちゃんというかなんというか……。あっ! 竜伸さんのお姉ちゃんとも言えるねぇ。って、そうじゃなくて……。ええと、ええっと……そう! 祟り神からどうやってかさねちゃんを助けたの? かさねちゃんの事どう思う? かさねちゃんすごくかわいいよねぇ? 着物もいいけど、モダンガールとかもスゴく似合うんだよぅ。あと~、え~と……」
なんだか方向感の定まらない質問をほんわかした顔にほんのちょっぴり力を込めてガトリング砲のように投げつけてくる黒髪の美少女――――やよい。
ほんわかしたやよいの突然の豹変(と言うのかどうか)に呆気にとられる竜伸にかさねが苦笑気味に頷く。なおも何か尋ねようと身を乗り出したやよいを女将さんがやんわりと制した。
「やよい、竜伸さんにも喋らしておやりよ。ほら、困ってるじゃないか」
はっ、と我に帰ったのか顔を赤らめると、やよいは「ごめんなさ~い」と小さく舌を出してぴょこんと椅子に座り直した。
皆が話を聞く体勢になったのを見て竜伸は気になっていた事を尋ねてみた。




