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夕日の国のファンタジア  作者: 生田英作
第2部
103/358

[103]


 て、て、て――


「てぇへんだぁぁぁぁぁ!!!」


 誰かが勢いよく店の中へ転がり込んで来た。


「おや、うわさをすれば、松さんじゃないのさ。どうしたね? ゆきのは、一緒じゃないのかい?」


 女将さんが微笑みかけたのは、床に両ひざを付き肩で息をする短髪の少年。

 歳の頃は、竜伸やかさね達と同じ十代半ばくらいだろう。

 着物の上に着た紺色の半纏が、肩の下までずり下がっていた。

 やよいが慌てて持って来たコップの水を喉を鳴らして飲み干すと、松さんと呼ばれたその少年は、「いや、それが――」と話し始めた。


「どうせまた揉め事じゃろ?」


「ええ、そうなんです、(あね)さんが……って、こりゃあ、比売神さま、お久しぶりで――」


「いや、いいから――」


 話の続き!!

 女性陣全員に突っ込まれ、松は、てへっ! と額を叩いた。


「すいやせん。実は、その――姐さんの悪い虫がまた始まりやして……」


 あちゃぁ……


 竜伸以外の一同が天を仰いだ。


「悪い虫?」


 竜伸が傍らのかさねへ視線を向けるとかさねは、苦笑気味に肩を竦める。


「賭場破り……ゆきのさんは、バクチの名人なんです」


「いえいえ、そうは言っても今日の賭場破りは、いつもとは、ちょいとばかし趣きが違っているんでさぁ」


「「「?」」」


「いやいや、いかな皆さんとて、今回ばかりは驚きますぜ」


「これ、松。もったいぶっておらんと早く言え」


「いえいえ、それが……」


 一同が固唾を呑んで見守る中、松はとっておきの内緒話を打明ける子供のように瞳を輝かせた。



「原因は、女の子なんでさぁ」




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