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夕日の国のファンタジア  作者: 生田英作
第1部
100/358

[100]


 大草原にぽつりと立つ一軒の洋館。


 ウッドデッキの揺り椅子に佇む一人の女性がいた。

 煌めくような緑の黒髪と均整の取れたしなやかな体。

 深紅のワンピースドレスに身を包んだその貴女(ひと)は、赤く輝く太陽を見つめながら想いの淵に沈んでいた。

 



 あなたは、いつもそう。

 

 わたしの躊躇(ためら)いを見透かすかのように


 わたしの戸惑いを揶揄(からか)うかのように


 世界(そこ)にいて、


 でも、いつもやさしく笑ってくれる。


 この世界の全てを知る筈のわたしに「結局、世界の全てなんて誰にも分からないんですよ、きっと……」って。


『現世の国』に現れた鉄砲撃ちの男の子。


『黄泉の国』に現れた五人目のかさね。


 それに『常世の国』の……。


 …………。


 まだ、終わっていない、ってあなたは思っているのね……。


 その小さな体に閉じ込められたあなたは――


 歳月(とき)を超え、世界を超えて現れるあなたの魂は――




 ――いま、何を見つめているの?




 夕闇色の風がそっと髪を揺らす。

 沈みゆく太陽を見つめながらその貴女(ひと)は静かに目を閉じた。


この節にて第一部完結です。

ここまで読んで下さいました皆さま、本当にありがとうございました。

なお、翌日(1月2日 15:00)より第二部の連載を開始致します。

どうぞ、引き続きよろしくお願い申し上げます。


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