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大草原にぽつりと立つ一軒の洋館。
ウッドデッキの揺り椅子に佇む一人の女性がいた。
煌めくような緑の黒髪と均整の取れたしなやかな体。
深紅のワンピースドレスに身を包んだその貴女は、赤く輝く太陽を見つめながら想いの淵に沈んでいた。
あなたは、いつもそう。
わたしの躊躇いを見透かすかのように
わたしの戸惑いを揶揄うかのように
世界にいて、
でも、いつもやさしく笑ってくれる。
この世界の全てを知る筈のわたしに「結局、世界の全てなんて誰にも分からないんですよ、きっと……」って。
『現世の国』に現れた鉄砲撃ちの男の子。
『黄泉の国』に現れた五人目のかさね。
それに『常世の国』の……。
…………。
まだ、終わっていない、ってあなたは思っているのね……。
その小さな体に閉じ込められたあなたは――
歳月を超え、世界を超えて現れるあなたの魂は――
――いま、何を見つめているの?
夕闇色の風がそっと髪を揺らす。
沈みゆく太陽を見つめながらその貴女は静かに目を閉じた。
この節にて第一部完結です。
ここまで読んで下さいました皆さま、本当にありがとうございました。
なお、翌日(1月2日 15:00)より第二部の連載を開始致します。
どうぞ、引き続きよろしくお願い申し上げます。




