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誘導灯

作者: 佳遠

駄文を書いてみた。。。

 幼い頃、鉄塔の誘導灯が不思議で仕方がなかった。

 緩やかに瞬く赤い光に、どこか知らない場所に誘われるかの様に思えて、恐ろしくも有り、だけどそれ以上に理由もなく惹きつけらていた。


 その意味を知った時でさえ、その明かりを頼りに進めば、此処とは違う、何処でもない場所へ行けるものだと信じでいた。



そして、現在。




 下らない。


 本当に下らない男だった。

 両家顔合わせの上、結納を済ませた婚約者が、同じ会社に勤める何でも他人のモノを欲しがる”欲しがり女”に擦り寄られ、そのまま浮気に走るとは、何処の小説の世界だと正直思った。

 浮気がばれた時の婚約者は、教科書通りとしか思えない言い訳ばかりを口に出し、”欲しがり女”は、貴女に魅力がないからとか此方を貶す発言ばかりだった。

 幾つかのけして小さくはない修羅場を乗り越え、結局婚約破棄となり、私は浮気婚約者と欲しがり女からそれ相当の慰謝料を受け取り、きれいさっぱりと独り身に戻ることが出来た。


 解せないのは私の実家は婚約破棄だなんてみっともないと、相手方事由によるものなのに難色を示し、そのまま絶縁を言い渡されたことだった。

 会社の方も既に婚約時に退職する旨を申し立ていた為、退社理由は異なったものの、そのまま引き継ぎを済ませて退社した。


 血縁的にも社会的にも留めるものが無くなった私は、引っ越しを決めた。

 引っ越し先はまだ決めてはいない。

 行き当たりばったりで決めようと思う。


 取り敢えずの身の周りの物以外をレンタル倉庫に放り込み、残りの荷物を慰謝料で購入した大型自家用車にあれこれと詰め込む。

 身の回りの物とはいえ、女の荷物は男のそれより遥かに多い。

 化粧品を含む洗面道具やバスグッズ等、服や装飾品よりもそれらが荷物の大半を占めているのは、単に業務用規格のものを纏め買いしていたのが原因だった。

 最後に小物類を使用目的別に分類してバックに詰め込み、私物が一切無くなった部屋を最期に見渡し部屋を後にした。


 大学時代から住んでいたマンションはそれなりに愛着があるものの、それでも最期の思い出が最低最悪だったため、この街には未練もない。

 最低最悪な思い出以上に、大切な出来事も沢山あったけれども、それでもここに住み続けることに忌避感の方が大きかった所為もある。

 世話になった人達に挨拶を済ませ、後は管理人に鍵を返却するだけの簡単な退去の手続きをすませ、車に乗り込んだ。


 エンジンをかけ、アクセルを踏む。

 今迄のことより、新しい門出を祝うために。


 かなりの重量のあれこれを積み込んだものの、さすが大型・大排気量。

 積載重量をものともせずに、市街地を走り出した。


 その流れゆく景色の一部となった市街地で、目についた高層ビルの誘導灯に、昔の私を思い出す。


 そう、幼い頃思ったことでも実行してみようか?


 何処までも行けそうで、知らない場所へ導いてくれそうな、誘導灯。

 目的もなく、ただ、居場所を探すだけの道行きの標に。

 目についた誘導灯に従って、走らせてみようか。

 それが、今の私には相応しい気がして。

 思い立ったらそれが一番の良案に思えてハンドルを切る。


 最悪な思い出で締めくくられたこの街を背に。

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