そうだ、王都へ行こう
8話目です。
私がこの世界に転生してもう1年と半年経った。
つい先月、念願だった自分の店を建てることができたのだ。
店を建てるための金を冒険者になって稼いだわけだがいろいろあったなと今更ながら思う。
例えば、冒険者になりたての頃、ベテランっぽい人にパーティを組んでくれないかと頼んだ時なんか
「職業は何なんだ?・・・・・・えっ、『店主』ってふざけてんのか?」
とか言われて組んでもらえなかったし、今使っている刀を自分で鍛え終わった時、あまりの達成感でついつい「強い魔物で試し切りしたいな」とか思って桁違いに強い魔物がいることで有名な東の大陸に行ったら、たまたま邪神に遭遇して倒さないといけなくなったりとか、あとは・・・考え出すとキリがない、もういいや。
でも、悪いことだけじゃなかった。邪神倒してEXランクになったし、一生遊んで暮らしても余るぐらいの金も手に入ったからカイレス伯爵領に店を構えることができたわけだしさ。まぁ、さすがに一般の人たちに邪神が出ました!なんて言ったらみんなパニックになるから、なんか超強い魔物が出たけど冒険者が倒したとかその魔物を倒した冒険者は世界初のEXランクになったとかそういった話がギルドから一般の人たちにされたんだけどその時に『戦場の流星』とかいう二つ名が広まったみたい。はっきり言って痛い。そんな感じでやってきた私もようやく自分の店を持てたんだな。今日はもう昼過ぎなのに客はまだ一人しか来てないけど・・・
と感慨に浸っていると店の端の方に座っているミリアさんから声がかかる
「ライラちゃん、コーヒーおかわり。」
「はい、すぐにお持ち致しますね。」
そう答えてポットを持って席に向かう
「それにしても最近毎日のようにここに来てますよね、ミリアさん?」
「何よ、来て欲しくないの?」
「いやそういうわけじゃなくて・・・仕事とか大丈夫なんですか?」
「ここってまだあんまり知られてないからサボるのにもってこいなのよ。まぁ、美人店主の喫茶店がある
って有名になってきてるからそろそろやばいかもだけど。」
「ギルド長に言いつけますよ。」
「あぁっ、ライラちゃんの裏切り者!」
そんな話をしていると突然店のドアが勢いよく開きいかにも貴族といった感じのでっぷりとした体でごろごろと宝石がついた趣味の悪い服を着た男が騎士風の男たちを連れてずかずかと入ってきた
そしてライラの前まで来るとなぜ自分がこんなことを・・・といった顔で言った
「貴様がライラ・セレストか?」
「えぇ、そうですが。お客様・・・ではないようですね。何か御用ですか?」
「王の命令だ。EXランク冒険者として王城まで来てもらおう。」
「それは、強制ということですか?」
「あぁ、そうだ。わかったらさっさとしろ。全くなぜ私がこんなことを・・・」
この人、ついに口に出しちゃってるよ!
「なぜ、とお聞きしても?」
「チッ、王が勇者の件で話があるそうだ。」
この人、私に向かって舌打ちしたよね!
っていうか勇者か・・・関係ないことじゃないし、一応聞きに行こうかな
「少し時間を頂いても?」
「・・・早くしろ。」
そう言われてミリアの方に向き直る
「すみません・・・ミリアさん・・・」
「いいのよ、ライラちゃんのことだから大丈夫だと思うけど気をつけるのよ。」
「はい。」
そう答えると店の地下にある自分の部屋に向かう
ちなみに店を建てるにあたって地下に書庫、武器庫、食料庫から衣装部屋やもちろん自分の部屋などを作ったのだ
それはさておき自分の部屋に着いたライラは着ていたエプロンを脱ぎ愛刀である2振りの小烏造の刀、火蓮と氷華を腰に差す
この火蓮と氷華は冒険者を始めて4ヶ月くらいなんとなく南の果ての火山と北の果ての凍土に行った時にたまたま見つけた炎神龍と氷神龍を倒したときに手に入れた核と超希少金属であるオリハルコンとミスリルを使って空間魔法で作り出した別空間で480年かけて鍛えたものである
そして食料などをアイテムボックスに入れ灰色のローブを上から羽織って店に戻る
店のキッチンまで戻って来ると例の男が店内をウロウロしていた
ミリアはもう帰ったらしく店内にはいない
「お待たせ致しました。」
「全く・・・私を待たせるとは無礼にも程があるわ!この私をフーリッシ子爵と知ってのことか!」
コイツ、フーリッシっていうのか
「・・・申し訳ありません。」
コイツどんだけ短気なんだよ!絶対に頭、常時沸騰してるだろ
「・・・仕方がない。今回だけは許してやろう。」
このフーリッs・・・デブでいいや、このデブはどうやら私の謝罪に満足したようだ
「何をほうけている、さっさとしろ。」
「はい、すみません。」
そう答えて店の表につけてあったデブの馬車に乗り込む
それから数時間は何もない平原を同じく何もなく進んでいたがある時、デブがふと気づいたようにこちらを舐め回すように見ているのに気づいた
「おい、貴様、喜べ。私がかわいがt「お断りします。」何っ!貴様、このフーリッシ子爵の命令が聞けないというのか!」
はぁ・・・コイツ命令とか言っちゃってるし頭悪すぎだろ
「なぜ私があなたの命令に従わなければならないのですか?」
少し威圧を使って言う
するとデブは真っ青な顔をしてガクガクと震えだした
それを見てライラは
「私、これでも冒険者なので護衛をしてきますね。」
と言い残して馬車の外へでた
そのとき後ろから「覚えていろよ」という声が聞こえた気がした・・・
それからは特に何もなく進み、カイレス辺境伯爵領の時より大きな城門が見えてきた
文章中に出てきた「小烏造」ですがこれは鋒諸刃作と呼ばれ、刀身の先半分が両刃の剣になっており、その独特の形から、剣太刀とも称されるものです。名刀幻想辞典参照
・・・えっ?なんでこんなわかりにくい刀にしたのかって?
それは私の趣味です。すいません。