よくある転生悪役令嬢の居る世界のシステムヒロイン
最近流行りの悪役令嬢転生モノ。
実際の乙女ゲームのヒロインさんって完璧だよねっていう
私の名前は緋川サツキ。家庭の事情により今日からこの私立桜花学園に転校してきたの。
家族からも離れて慣れない新天地だけど、頑張らなきゃ!
ここでの生活が、私の人生を大きく変えるなんてその時は思っても見なかった。
桜花学園は名前のように沢山の桜があって、何故か一年中桜が咲いている。
夏でも冬でも咲く桜には何か秘密があるのかな?
今は登校時間より早い時間だから誰もいない。待ち合わせの時間にも少し余裕はあるし、咲き誇る桜を少しくらい眺めてもいいかな。
白、ピンク、薄いピンクに濃いピンクと一口に桜と言ってもとても種類があった。
美しさに見ほれて居たら一瞬強く吹いた風に髪の毛が乱れて、慌てて鞄を持ってない手で抑えた。
閉じた目を開くと、そこには真っ白な、桜の中に……エラー。システムが異常を感知しました。原因を特定します。
攻略対象、咲良。ストレス数値正常。原因不明。対象のデータにハッキングを試みます。成功。接触者一名、氷川鏡子。対話ログ閲覧。イベント名、【あなたのために】までの進展を確認。ストレス数値正常の為、対話を試みることを保留します。
綺麗な桜だなぁ。
でも、そろそろ時間だから職員室に行かなきゃ。
「母さん、絶対私は負けないから」
胸に誓いを抱いて、私の高校生活は始まった。
後悔だけはしたくないの。
オープニングイベント【サクラ】失敗。対象の数値正常の為保留。次のイベント【新しい生活】の為に移動します。
ここが職員室だよね?
前居た学校と比べると校内の様子が違いすぎて少し心配。
職員室っていう札もかかってるし、ノックをして入ってみよう。
「失礼します」
「おはよう、早いね誰先生に用かな?」
真っ先に話しかけてくれたのはショートヘアの明るい印象の女性教師だった。
無視されたらどうしようと思っていたので、気さくに話しかけてくれるその様子にほっと息を吐いた。
「え、えっとおはようございます!私は考武高校から転入してきた緋川サツキです」
「あぁ、聞いてるよ。こんな時期に大変だね。担任の先生読んでくるからそこで少し待ってね。山岡せんせー、転入生が来てくれましたよー」
「あぁ、もうそんな時間か」
女性教師から声をかけられて書類から顔を上げた先生を見て、私は……エラー。システムが異常を感知しました。原因を特定します。
攻略対象、山岡時雨。ストレス数値正常。原因不明。対象のデータにハッキングを試みます。成功。接触者複数。好感度、頻度が高い順にソートします。一名異常を検知。個人名氷川鏡子。エラー。エラー。イベント名【俺だけのモノに……】発生ログを発見。ストレス数値正常の為攻略を保留します。
眼鏡をかけた、さっきの先生よりは少し取っ付きにくそうな先生だった。
「担任の山岡だ。クラスに案内する前に、まだ時間があるから応接室に行く」
「はい、よろしくお願いします」
私のクラスは二年三組らしい。応接室で柔らかい黒いソファに腰掛けてると緊張が少し解れていくような気がした。
登校時間になったのか、生徒の声が聞こえてくる。
腕時計を見ると8時10分。そろそろ……エラー。イベント【隠れ家】の発生時間になっても発生せず。ここまでの経緯、経験から推測するに氷川鏡子の接触により、最低でもイベント【発露】までのクリアの可能性があります。
「待たせたな」
「いえ、ドキドキしてたらすぐでした」
「そう緊張するな、というのは無理な話だがクラスの奴らは馬鹿だが頭は悪くない。うまくやっていけるさ」
「はい、頑張ります」
二階の廊下を並んで歩いていると、一階で言う職員室のあった位置に生徒会室と書かれたプレートが見えた。
今は誰も居ないようだ。
そしてついに緊張の自己紹介の時間だ。
入室を促され、ドキドキする胸を抑えて入る。
教室の生徒の目線を感じる。
段に登って、先生が私の転校を説明している内にちらっと教室全体を見てみる。
エラー。対象者二名のストレス数値正常。
原因、氷川鏡子と断定します。
対ストレス調整機能、緋川サツキの必要性を協議します。結論不要。
緋川サツキの速やかな廃棄を決定。転入後馴染めずに直ぐに転校、その間擬似的に氷川鏡子の役割を分担します。
「はじめまして、緋川サツキと言います。短い間ですがよろしくお願いします」
校内ストレス数値全て正常。イベントも円滑に行われています。
役割【緋川サツキ】を氷川鏡子に譲渡。校内の観測終了と共に帰投します。
意味不明だけど説明。
ヒロイン緋川サツキ(デフォルト)は契約によって縛られている攻略対象【桜】達と交流していき、疲弊した【桜】の心を癒していく。
それを良く思わない悪役令嬢、氷川鏡子(攻略可能)はヒロインに対して邪魔をしてくる。
忘れられかけている契約を再び結び直すのがヒロインの役目であり価値。
校舎の裏の泉に封じられたものを出さないようにしなくてはならない。
みたいなのが本来のストーリーだった。