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嵐の海に浮かぶ月影  作者: 柚田縁
第四章
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2. 保護区へ

 その日から数日が経過した明け方、船はアンデス海域の近くに着いた。ここは数少ない陸地がある場所なので、保護区になっている。許可無く立ち入れば、強制退去を命じられた上に罰金まで払わなければならない。

 だが、要は許可さえ貰えれば、ある一定の条件範囲において、入る事が許される。その許可を得るために、七海の支部へと通信を繋ぐ時、全員が操舵室へ集まっていた。別に集まらなければならなかった訳ではないのだが、自然とそうなったのだ。

 父が早速、相手を呼び出した。間も無くして、「こちらは七海連合第六海支部、そちらの船籍をどうぞ」とあった。

 この場所を管理しているのは、七海連合の第六海支部だ。父が船籍を述べた。

「船籍を照合しました。代表者はイリヒ・ニイミヤさんで間違いありませんか?」

「ああ、間違いない」

「それでは用件をお願いします」

「アンデス海岸への立ち入りを許可してもらいてーんだ。保証人は、リカルド=フォータイナー教授」

「少々お待ちください。……はい、要請は受理されました。しばらくその場でお待ちください。そちらに巡視船が向かいます。許可は査察の後になります」

 巡視船が来る前に、父は三月だけを呼んで自室へ入っていった。数分後出てきた三月に、私は何を父と話していたのか尋ねた。

「何話してたの?」

彼は周囲に誰もいない事を確認した上、小声で答えた。

「査察を受けた時に、保護区に入る明確な目的を訊かれるらしいんだ。その目的をどう答えるか、相談されたんだよ。言い出したのは僕だからね」

「それで、査察官にはどう言う事になったの?」

「正直に、泳ぎの練習という事にするよ」

 しばらくして、巡視船がやって来た。査察官は、船の乗組員を確認し、船の装備を点検し始めた。この時、もしも不信な点が見つかれば、許可はされない。

 査察官は三月の身分について詳しく訊いてきた。正直に言ってしまうと、彼は漂流者という事になってしまうのだが、そうすると彼は査察官によって保護されてしまう。

 しかし、そういう訳にはいかないので、結果的にここでは嘘を吐かなければならなかった。三月はこの船にエンジニアとして雇われているという事になったのだ。実際、それが最も自然なように思われた。

 巡視船に乗っていた査察官は、査察の結果が問題ないとわかると、許可証をくれた。そして、最後にこう付け加えた。

「そう言えば、他にも休暇を楽しんでいる家族が一組いますので、ご了承ください」と。

 けれども、私たちは特にそんな事気にもせず、意気揚々とアンデス海域へと入っていった。

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